「復興牧場」始動 相双の酪農家意欲、共同経営会社設立

 
「復興牧場」始動 相双の酪農家意欲、共同経営会社設立

復興牧場の建設地に立ち、「酪農が産業として利益を出せるということを示したい」と今後の意欲を語る田中さん

 本県の農業、漁業は東日本大震災と福島第1原発事故による放射性物質で大きな影響を受けた。農産品は、放射性物質検査の結果公表などを通して安全性が認識されてきているが、今もなお風評との闘いは続く。一方で、県産農産物の輸出も徐々に本格化しており、今後は輸入を停止している国に向けたセールスが重要となる。漁業は、試験操業の対象海域の拡大とともに対象魚種も51種(8月現在)まで増えた。震災前にブランド化を進めていたヒラメなどの操業開始などが今後の課題となっている。

 県酪農業協同組合(但野忠義組合長)は福島市土船地区で、東京電力福島第1原発事故の影響で生産休止に追い込まれた相双地方の酪農家5人に生産施設を有償で貸し出す「復興牧場」の本格的な整備を開始した。5人は同牧場の経営会社「フェリスラテ」を設立、新天地での酪農再開に意欲を見せる。復興牧場は3.6ヘクタールの敷地に牛舎3棟、管理牛舎、堆肥処理施設などを備え、来年3月に完成、同4月に生乳生産を開始する予定。

 フェリスラテの社長を務めるのは、飯舘村長泥地区で酪農を営み、現在は福島市に避難する田中一正さん(43)。震災後、NPO法人が避難区域の酪農家を雇用して運営する同市松川町の「ミネロファーム」の場長を務めてきた。

 同組合から復興牧場経営の打診を受け、「大きな牧場をゼロからつくる経験はなかなかできない。自分がやるしかない」と決意、4月にほかの4人と共同経営会社を設立した。田中さんは「3年ぐらいで足が地に着くことができるようにしたい。酪農が産業として利益を出せるということを示したい」と意気込む。