「県産米」輸出再開 シンガポール足掛かり、販売実績築く

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「県産米」輸出再開 シンガポール足掛かり、販売実績築く

県産米の輸出再開をきっかけに風評被害解消への期待を込める佐藤さん

 原発事故後に輸出が途絶えていた県産米について、全国農業協同組合連合会(JA全農)は8月、輸出を再開した。輸出先はシンガポールで、アジア圏経済の中核を担う同国で県産米の販売実績を築き、規制や風評で輸入を控える他国への輸出再開に向けた足掛かりにしたい考え。

 輸出したのは、須賀川市で収穫された昨年産米300キロ。8月22日から現地の日系スーパーで販売した。

 全農と県は同国で県産米の継続した販売を目指している。コメの放射性物質の全袋検査など安全性の確保に向けた取り組みとともに、実効性のある情報発信策が求められそうだ。県によると、事故前のコメの主要輸出先は香港と台湾で、2010(平成22)年度に計約100トンを輸出したが、事故後は輸入規制や風評で輸出が停止されている。シンガポールで継続した販売を実現することで、県は「香港や台湾を含め他国で県産米を受け入れる動きが広がる可能性がある」とみている。

 コメ完売「一筋の光」 須賀川の農家「販路拡大を」

 原発事故後、初めて輸出された県産米はシンガポールの日系スーパーで瞬く間に完売した。輸出米の原料となった岩瀬清流米を生産する須賀川市の農家は、先の見えない風評被害との闘いに一筋の光を見いだし、県産米のさらなる販路拡大に期待を込める。

 「原発事故後、福島という名前だけで売れない状況が続いていた。それだけに、(輸出再開は)歓迎している」。岩瀬清流米生産組合の副組合長を務める佐藤藤雄さん(61)は朗報に喜ぶ。

 本県産の野菜や果物の売れ行きは徐々に回復しているが、コメに関してはまだ道半ばだという。「コメは供給が十分。その中でわざわざ福島のコメを選ぶ人は少ない」。原発事故前は高い人気を誇った関西方面でも取扱先は激減。取引のあったスーパーからは「売りたいけど、客から『何で福島のコメを扱うんだ』と言われるのがつらい」という声が聞かれたという。

 佐藤さんは「県産農産物の安全性をPRする報道やCMは多いが、果たして関西、全国の人がどれだけ見ているのか」と、アピールの手法に疑問を呈し、全国的なPRの重要性を訴える。「岩瀬清流米だけでなく、県産米を何とかしたい」と切実な思いを語る。

 県産農産物の中でも風評被害の影響が大きいコメにとって、今回の輸出再開は大きな追い風だ。「以前は県外の人たちを招いて田植えや稲刈り体験をやっていた。全て元に戻して、またやりたいんだ」。佐藤さんは今後も地道なPR活動を続けながら、一日も早く原発事故前のような穏やかな田園風景が戻ることを願う。