増え続ける「労災」、14年度36人 福島第1原発・作業災害

 
増え続ける「労災」、14年度36人 福島第1原発・作業災害

 東電によると、福島第1原発での作業災害(労災)は本年度、8月末現在で36人。すでに前年度の32人を上回っている。汚染水対策工事の本格化に伴って作業員が大幅に増員され、7月の作業員数が5700人余りと前年同月の約2倍になるなど増員が労災件数を押し上げている格好だ。

 年度別では、原発事故前の3年間平均が約15人で、事故直後の11年度を除いても発生ははるかに多くなっている。高線量の所で全面マスクに防護服を着用する作業が多く、「熱中症」と視界が利かないことによる「転倒・つまずき」の増加が目立っている。ただ、本年度は熱中症に重症者はなく、東電の担当者は「早期申し出と早期受診の徹底で、軽症で食い止めている。このほか高温多湿時は作業を原則禁止している」と話している。

 町民との共生模索 宿舎建設進む広野 

 広野町は震災後、福島第1原発の収束と双葉郡の除染に当たる作業員の拠点となった。町内では、現在も新たな作業員宿舎の建設が進められ、帰還した町民と作業員の「共生」が課題となっている。

 町によると、町内を拠点に生活する作業員は今月にも3000人を超える見通しだが、それでも宿舎は足りていない。町内に宿舎を持つある大手建設会社の担当者は「(宿舎に)入りきれず、いわき市から通う作業員も多い。場所さえあれば、宿舎を増やしたい」と話す。8月下旬に町内に完成したホテルは、オープン前の段階から半年間の予約が作業員で埋まった。こうした状況に町民からは不安の声も上がる。作業員宿舎の近くに住む30代の主婦は「震災後は見たこともない人が増えた。子どもがいるので心配」と話す。

 町は昨年度末、新たな土地利用構想を策定。山間部を通る県道沿いに「廃炉企業住宅エリア」を設けた。作業員向けの住宅用地の確保と集約で、住民の日常生活と混在しない街づくりを進める考えだ。