増え続ける「裁判外手続き」 和解仲介、13年上回るペース

 
増え続ける「裁判外手続き」 和解仲介、13年上回るペース

 東京電力福島第1原発事故の賠償をめぐり、被災者と東電との和解を仲介する文部科学省の原子力損害賠償紛争解決センターへの裁判外紛争解決手続き(ADR)の申し立てが増え続けている。地区単位などの集団申し立てで、賠償増額の和解が成立した事例が出たことが、増加の背景にある。

 ADRの申し立ては今年、4825件(11月末現在)に上り、既に昨年の4091件を上回る。特に浪江町民約1万5000人をはじめ、飯舘村長泥地区や同村蕨平(わらびだいら)地区、伊達市霊山町、相馬市玉野地区など、自治体や地区単位での申し立てが目立ってきている。また、賠償増額で和解が成立した事例が出てきたことで、その近隣や同じ状況にある地域が申し立てに踏み切るケースも増えてきた。

 慰謝料の増額を求めた浪江町民の申し立てでは、同センターが一律月5万円を増額する和解案を示したが、東電は「国の賠償指針と乖離(かいり)し、他の避難者との公平性を欠く」として受諾を拒否、現在も協議が続いている。

 一方、飯舘村で唯一、帰還困難区域に指定された長泥地区では、東電が被ばく不安への慰謝料を含む賠償金を上乗せして支払うことで和解が成立。旧特定避難勧奨地点に指定されなかった伊達市霊山町小国地区の住民らも、同様の内容で東電が支払いに応じた。

 飯舘村長泥地区に隣接する同村比曽地区のほか、避難区域に隣り合わせの相馬市玉野地区の住民らも「賠償が不十分」として申し立てをしており、今後も集団申し立てが増えることが予想される。