「最終手段」セメント注入 福島第1原発2号機トレンチ問題

 
「最終手段」セメント注入 福島第1原発2号機トレンチ問題

 東京電力福島第1原発2号機の海側で電源ケーブルなどが通る地下道(トレンチ)に高濃度汚染水がたまっている問題で、東電は汚染水の抜き取りに向け、特殊なセメントを段階的に内部へ流し込み、トレンチをふさぐ手法に踏み切った。

 セメントで固めてしまえばトラブルが起きたとしても後戻りは難しく、ついに"最終手段"を投入した格好だ。少しずつ汚染水をくみ上げながらセメントの効果を見極めることが必須となる。汚染水の建屋からの流出やトレンチ内に残留する懸念が指摘され、東電が監視に万全を期し、慎重に作業を進められるかどうかが成否の鍵を握る。

 2号機のトレンチには、事故直後に流れ込んだ5000トンもの高濃度汚染水がたまったままだ。原子力規制委員会は「海に流出する恐れがある。最優先で取り除くべき重大なリスク」と警鐘を鳴らし、東電に速やかな抜き取りを指示していた。

 東電は、2号機タービン建屋とトレンチの接合部の止水を試みてきた。まずは接合部の汚染水を凍らせて「氷の壁」を築き、水の流れをせき止めてから汚染水を抜き取る方法に挑戦したが、完全な凍結に失敗した。さらに止水材を入れて隙間の穴埋めを狙ったが、これも十分な成果を得られず、止水対策を断念した。

 セメントの効果について東電は年内に確かめ、来年3月までに埋め立て作業を終える見込み。抜き取りが完了しなければ、国と東電が汚染水対策の目玉とする「凍土遮水壁」の設置工事が遅れる可能性も出てくる。