廃炉へ"道のり険しく" 第1原発4号機は燃料取り出し完了

 
廃炉へ

廃炉作業が進む東京電力福島第1原発=2月28日午後2時40分、大熊町

 東京電力福島第1原発事故から4年がたとうとしている。本県復興の前提となる廃炉作業をめぐっては、4号機で昨年12月に使用済み核燃料プールに残っていた燃料集合体1535体(使用済み1331体、未使用204体)の取り出しが完了。先行きの見えない廃炉への道のりに一定の進展をみた。ただ、汚染水対策の本格化による作業員の増加に伴い、1月には第1、第2原発で作業員2人が死亡する労災事故が相次ぎ、東電の安全管理の甘さが浮き彫りとなった。

 危険箇所の洗い出しなどを進める安全点検を行ったが、これらの影響で作業工程への遅れが生じている。炉心溶融(メルトダウン)を起こした1〜3号機の溶融燃料の取り出しについても、溶け落ちた燃料の状況の把握や取り出し方法は、いまだ決まっていない。また、2月には2号機原子炉建屋屋上の一部で高濃度の放射性物質を含む雨水が排水路を通って港湾外の外洋に流出していた問題が発覚。東電は事前に情報を把握しながら公表せず、問題意識の甘さを露呈した。

 トラブルは後を絶たず、廃炉に向けた道のりはいまだ険しい。東電にはこれ以上工程が遅れないよう進めるとともに、安全で着実な作業が求められている。

 次は3号機、新年度に開始 

 東京電力福島第1原発では、4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しがほぼ計画通りに進み、大きなヤマを越えた。だが、原子炉内の燃料が溶け落ちた他号機での作業は放射線量が極めて高い環境下の作業となり、さらに難しさが増す。

 次の燃料取り出しは3号機の予定。新年度の開始を計画しているが、昨年8月に遠隔操作のクレーンでつかみ損ねた大型の機材がプール内に落下し、回収までに4カ月近くかかった。現在は他のがれきの撤去作業が進んでいる。

 1号機では昨年12月、原子炉建屋カバー上部から、放射性物質の飛散防止剤の効果確認のため取り外していたパネル2枚を元の屋根部分に戻した。汚染水対策「凍土遮水壁」の工事が終わるのを待って、今月にも建屋カバーの本格的な取り壊しを始める見通しだ。

 水素爆発を免れた2号機は原子炉建屋が残っているが、建屋内や設備の放射線量が極めて高く、作業の見通しが立っていない。

 今年に入り、東電は原発が立地する大熊、双葉両町、県と廃炉に特化した新たな安全確保協定を締結した。作業の難しさが顕在化し、廃炉工程の遅れも懸念されるが、より安全で着実な廃炉の実行が求められる。

 課題解決へロボット活用 高線量下の原子炉建屋 

 廃炉作業が続く福島第1原発1〜3号機の原子炉建屋内は依然として放射線量が高く、人が立ち入れない現場では遠隔操作やロボットを活用した作業に頼らざるを得ない。溶けた核燃料(燃料デブリ)の状態を把握するための技術やロボットの開発が、廃炉に向けた今後の課題解決の鍵を握る。

 東京電力は2月、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線の「ミュー粒子」の透過能力を利用した初の実証試験に乗り出した。ミュー粒子はほとんどの物質を透過する一方、核燃料に含まれるウランにぶつかると吸収されたり進む方向が変わったりする。この性質を利用し、エックス線写真のように燃料デブリの位置や分布範囲が把握できる仕組みだ。東電は1号機の原子炉建屋そばの2カ所に測定機器を設置。約1カ月かけて観測し、今月末に調査結果をまとめる予定だ。燃料デブリ取り出しの方法は決まっていないが、成功すれば、廃炉に向けた大きな一歩となる。

 格納容器内の調査に向けたロボット開発も少しずつ進んでいる。廃炉技術を研究する国際廃炉研究開発機構(IRID)などは1号機の格納容器内部を調査するロボットを開発。将来的には、溶けた核燃料の調査への活用も視野に入れる。