県原子力対策監・角山茂章氏に聞く「今ある作業を確実に」

 
県原子力対策監・角山茂章氏に聞く「今ある作業を確実に」

「確かな技術を構築させ、作業を進めることが大切だ」と指摘する角山氏

 東京電力福島第1原発の廃炉に向けた提言などを行う県原子力対策監の角山茂章氏(71)に汚染水対策や廃炉に向けた課題などを聞いた。

 --東電のこれまでの廃炉、汚染水対策の評価は。

 「どの作業をみても、先を見据えるといった基本的な姿勢ができていないと感じる。例えば、汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)も試運転の段階でトラブルが続いた。廃炉をめぐる作業の一つ一つが新たなチャレンジ。念には念を押し、確かな技術を構築させた後、取り組むことが重要」

 --タンクにためる高濃度汚染水の浄化完了目標を先送りするなど、汚染水対策の工程で遅れが目立つ。

 「目標を掲げることは大切だが、スケジュール通りに間に合わせようとするとかえって作業を焦らせ、ミスにつながりかねない。廃炉までに必要とされるのは、新たな技術よりも、まずは今ある作業を確実に進めることだ。今後、燃料取り出しなどの高線量の環境下での作業や、前例のない燃料デブリの取り出しに向けては当然リスクも一層高くなる。東電社員をはじめ、元請けの作業員らの経験と判断力を高める教育が必要だ」

 --建屋周辺の井戸「サブドレン」などからくみ上げた汚染地下水を浄化して海に放出する計画は地元漁協の理解が不可欠だが、反発が根強い。

 「サブドレンからくみ上げた地下水を浄化してもトリチウムが残る。人間に与える影響は少ないと考えられるが、これまでに前例がなく、国際的にも議論が進んでいなかったため、海に放出する一定のルールがない。海中で希釈すれば環境の濃度と変わらない程度となる見込みだが、風評被害など県民の感情を考えると非常に難しい問題だ」

 つのやま・しげあき 東京都出身、東大理学部卒。会津大理事長・学長などを歴任、2013年10月から県原子力対策監を務める。