進む「ロボット革命」 廃炉作業、介護...広がる"活躍の場"

 
進む「ロボット革命」 廃炉作業、介護...広がる

山林火災対応型ロボット「がんばっぺ1号」の最終調整をする会川会長(右)とメンバー

 県内の工場立地件数が東日本大震災以前の水準を維持するなど本県の産業再生が着実に進んでいる。県はロボット産業を本県の主要産業に成長させるべく「ふくしまロボットバレー」の形成に向けた本格的な取り組みを始めた。被災地から新天地に移って事業を再開した企業や、震災をきかっけに本県進出を決めた企業がある。太陽光など再生可能エネルギーの導入は一層進み、企業にとどまらず民間の動きが加速している。建設業界での人手不足の課題などはあるが、将来を見据えた本県企業の取り組みは力強さを増している。

 いわき市のいわきロボット研究会は、地元企業の技術力を結集してロボットを作り上げようと、昨年4月に誕生した。東京電力福島第1原発の廃炉作業とともに人手不足が深刻化している介護分野で活躍する二足歩行型のロボットの開発を目標に掲げる。

 電気や精密機械、ソフトウエアなど浜通りの企業40社が参加する。県の災害対応ロボット産業集積支援事業の採択を受け、山林火災に対応した「がんばっぺ1号」を開発、完成が間近に迫る。がんばっぺ1号は、消火用ホースが届かないような火災現場を想定。戦車を思わせるキャタピラ付きの台車が特徴で、重いポンプを乗せながら坂道や悪路を走行できるようにと、バランス機能と特殊なモーターを取り付けたのが特徴。いわき市消防本部での活用が予定されている。

 今年はロボットの先端にアーム(腕)を取り付けるなど性能を高める計画。会川文雄会長(67)=会川鉄工社長=は「10年後、一家にロボット1台の時代がくる」と予想。「がんばっぺ1号の機能を進化させ、会話ができ、家の中を掃除したり重い物を持ったりできる人間型ロボットを完成させる」と話す。「浜通りに仕事を増やして復興を支えていきたい」と会川会長は言葉に力を込めた。

 医療支える量産体制構築 

 医療・福祉用ロボットの開発を手掛けるサイバーダイン(茨城県つくば市)は新年度、郡山市に同社初の次世代型多目的生産拠点を建設する。来年3月の操業を予定しており、県が集積を目指すロボットと医療が融合した産業再生のシンボルとして期待される。

 同社は、装着することで身体機能を改善・補助・拡張するサイボーグ型ロボットスーツ「HAL」を開発する。現在は本社で製造しているが、郡山で量産体制を構築する。また、洋服を着たままでの心電図測定など、HALが誇る技術を応用した新製品の製造も目指すとしている。

 郡山進出について、山海嘉之社長(56)は「隣接県として復興を支援したかった。郡山でのチャレンジを地域連携の一つのモデルにしていきたい」と話す。国内屈指の「医療機器生産県」として、医療機器の生産に必要な部材、人材の本県への供給も見込んでおり、50人程度を雇用する計画だ。医療・福祉用ロボット分野で世界のトップを走る同社が本県での医療機器、ロボット関連産業の集積をけん引する。

 軽々運べる「マッスルスーツ」 

 菊池製作所(東京)は南相馬市小高区に設けた南相馬工場をロボットの製造拠点と位置付け、災害時に限らず、日々の生活をサポートするようなロボットを全国の大学や研究機関と共同で開発する。

 第一弾は重い物を持ち上げる作業を補助する着用型の筋力補助装置「マッスルスーツ」と自律型の小型無人ヘリコプター「ミニサーベイヤー」。いずれも同工場で量産化に向けた準備を進める。マッスルスーツは介護施設で高齢者を抱えたり、物流での荷物の積み下ろしを想定。ミニサーベイヤーは飛行地点や経路を設定すれば自動で目的地に向かうのが特徴。実証試験では被災地の空撮や除染効果調査などで実績を挙げた。農薬などの空中散布、人が入れない災害時の危険地帯の空撮などでの活用も期待される。

 災害対応ロボットの研究も進めており、四つの腕が付いた「4腕作業ロボット」や有線の「重量級ヘリコプター」などの開発で全国の大学と連携する。同社の高橋幸一取締役(53)は「さまざまな大学の研究者と研究・開発する最先端技術の集積地をつくりたい。ロボットの開発・製造は若い人にとって魅力のあるテーマ。産業集積と雇用創出で復興につなげたい」と思い描く。

 県、浜通りを中心に推進 

 県は、ロボット産業を本県の新たな主要産業として成長させるための戦略を練り、県内集積を図る「ふくしまロボットバレー」の形成に向けて、本格的な取り組みに着手する。

 県が掲げるのは「ロボット産業革命の地ふくしま」。会津大などを研究開発の支援拠点と位置付け、浜通りを中心に県内のロボット関連企業と共同研究に取り組む。

 支援の枠組みを従来の研究・開発から広げ、医療や介護、農業など幅広い分野でのロボット導入を進める。具体的には病院や介護福祉施設、企業などに導入費を補助することでロボットを普及させる考えだ。またロボットフェアの開催を通じて本県発のロボットを紹介し、販路開拓に結び付ける。将来のロボット産業を担う若年層をはじめとする県民の関心も高め、人材確保を下支えする。