減少見えた線量 子どもの外部被ばく、政府推計の3分の1

 

 東京電力福島第1原発事故から間もなく丸4年。事故で飛散した放射性物質は県全域で減り、高濃度の汚染地帯は大幅に縮小した。放射線の人への影響でも、個人線量計による外部被ばく線量調査で、多くの地域で平常時の被ばく限度とされる年1ミリシーベルトを下回るという結果が示されている。放射線の影響を受けやすい子どもたちの健康を守る取り組みも甲状腺検査や新しい体力向上プログラムの開発など一つ一つ積み重ねてきた。ただ放射線の健康不安は根強い。取り組みを重ねて得られる多くの知見を、県内外に発信し浸透させる努力が求められている。

 南相馬、実測データの成果 

 「外部被ばく線量が年1ミリシーベルトになる空間放射線量は毎時0.5〜0.6マイクロシーベルト程度と考えられる」。南相馬市立総合病院の坪倉正治医師らは1月、個人線量計を適切に使った同市の小学生〜高校生520人を調べた結果、実測値に基づく空間線量の目安は、政府が除染実施に当たり、年1ミリシーベルトになる1時間当たりの放射線量と示した「毎時0.23マイクロシーベルト」を上回るとの考えを示した。

 坪倉医師らは、市が個人線量計で行った外部被ばく検査のうち、2012(平成24)年9〜11月の3カ月分の結果を1年に換算した数値と、それぞれの自宅前の空間線量を政府の計算式に当てはめた推計値を比較した。その結果、計算式に基づく外部被ばく線量の推計値は平均で年2.4ミリシーベルトと試算されたが、個人線量計の実測値では平均で年0.8ミリシーベルトと1ミリシーベルトを下回り、政府の計算式による推計値の約3分の1だった。

 政府の計算式では、1日8時間を屋外、16時間を木造の建物の中で過ごすと仮定している。しかし実際には8時間も外にいない場合が多く、屋内にしても、木造より放射線を遮る効果が大きいコンクリート造りの建物で過ごすことも多い。坪倉医師らの調査は、政府の計算式による推計が実態に合わないという結果を物語った。ただ坪倉医師は「(調査結果で)除染をやらなくても良いというわけではない」と話した。

 政府計算式は除染の目安 1時間当たり0.23マイクロシーベルト 

 原発事故に伴う年間の外部被ばく線量を推計する政府の計算式は、環境省が放射性物質汚染対処特措法で除染実施の目安として示した。1時間当たりの放射線量の目安とした「0.23マイクロシーベルト」は、原発事故による被ばく線量が事故前に比べ年1ミリシーベルト以下となるよう一律の条件を仮定して放射線量を当てはめて試算した。

 政府の推計値は「1日8時間は屋外、16時間は放射線が遮られる木造家屋で過ごす」と仮定。家屋にいる間、被ばく線量は屋外の40%となるとして計算する。この値に自然界にもともとある線量を足して求める。ただ、同じ線量の場所でも、被ばく線量は生活行動のパターンで異なる。個人線量計で測定すると推定値より低い場合が多い。環境省は被ばく線量を算定する際には、空間線量に基づく推計ではなく住民に線量計を配布して計測する個人被ばく線量の実測値とすべきとの見解を示している。

 福島、郡山市など個人線量計で調査継続 

 福島、郡山市など県内市町村は、ガラスバッジなど個人線量計による外部被ばく線量調査を続けている。伊達市は2012(平成24)年から1年間の調査を3回実施している。第2回調査(13年7月〜14年6月)は15歳以下と妊婦らを測定。平均は0.76ミリシーベルトで、全市民対象の第1回(12年7月〜13年6月)の0.89ミリシーベルトより0.13ミリシーベルト低くなった。旧特定避難勧奨地点を含む高線量地域では、第1回から0.59ミリシーベルト減の年1ミリシーベルトで、国が長期目標とする値まで下がった。高線量地域ほど減少幅が大きかった。市は「除染の進展と放射性物質の半減期が要因と考えられる」とする。

 福島市は12年度から毎年、3カ月間の調査を実施。14年度の15歳以下の実測値は平均0.08ミリシーベルトで、1年間に換算すると0.32ミリシーベルトだった。11年度の年換算は1.04ミリシーベルトで減少傾向にある。

 郡山市が市内の小、中学生を対象に14年11月14日から15年1月22日までの70日間行った被ばく線量の平均値は0.07ミリシーベルト。年換算では0.36ミリシーベルトで、前年同時期と比べ0.1ミリシーベルト、11年10月からの第1回より0.96ミリシーベルト減少した。