子どもの肥満、体力低下"深刻な問題" 運動不足が習慣化

 
子どもの肥満、体力低下

 県内では、震災と原発事故から4年が過ぎようとする今も、子どもたちの肥満傾向や体力低下が深刻な問題となっている。

 文部科学省が毎年小学5年と中学2年の児童生徒を対象に行う「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)で、本県は震災後、実技8種目の合計点の平均値が全国平均を下回る状況が続き、原発事故の健康不安を背景にした子どもの運動能力の低下が顕著となった。

 時間の経過や除染の進行に伴い、屋外活動の機会は徐々に回復してきているものの、原発事故直後に屋外活動を制限されたことや、仮設住宅などでの避難生活が長期化することで、運動不足が習慣化している可能性が指摘されている。

 小学校で運動身体づくり

 子どもの体力低下を解消する対策として、県教委は福島大と協力して新たな「運動身体づくりプログラム」をつくり、本年度から小学校の体育の授業で取り入れている。

 プログラムは準備運動の時間に、きつさや苦しさを感じず、子どもたちが楽しみながら取り組めるよう工夫を凝らしている。8分程度で体を動かすことができて、バランス良く運動感覚を養うさまざまな運動を考案した。

 スキップやイヌ走り、カニ走り、カエルの足打ち、アザラシ歩き、クモ歩きなどユニークなメニューを組み合わせ、屋内での授業で11種類、屋外では6種類のプログラムで構成。リズム感覚を養うため、音楽に合わせて太鼓をたたく動作も体育の授業で取り組むことを推奨している。

 浅川小、児童ら意欲"ユニーク運動" 

 県教委の運動身体づくりプログラム研究協力校の浅川小(浅川町)では週1回、体育の授業内容に合わせてプログラムを取り入れ、屋内外で子どもたちの体力向上に取り組んでいる。

 同校周辺は低線量地域で、屋外での運動に影響があまりなかったが、子どもたちに地面を手で触らせないようにした。プログラム検証委員を務める鈴木信明教諭は「今の子どもたちは遊ぶ『空間』『時間』『仲間』がない」と指摘する。プログラムに取り組んでも、カンガルー跳びやクモ歩きなどユニークな運動に個人差が現れるという。

 ただ授業で、子どもたちは一緒に達成しようと「頑張れ」と互いに声を掛け合う。鈴木教諭は「数値を高める目的だけではマンネリ感が出る。楽しもうという子どもの意欲を尊重した。子どもたちが共に励まし合うなど、運動以外の効果もあった」と、プログラムの意義を強調した。

 震災があった2011(平成23)年度と比べ本年度の体力テストでは6年生ソフトボール投げで女子が平均3メートル伸びた。中には5メートル以上伸びた子もいた。立ち幅跳びでは男女とも平均20センチ以上、記録が伸びた。6年生の尾又駿太朗君は「いろんな運動があって楽しかった。体育がさらに好きになった」と体を動かせる楽しみを実感している。