どうなる「営業賠償」 合意の賠償金は総額4兆6500億円超

 
どうなる「営業賠償」 合意の賠償金は総額4兆6500億円超

 東京電力福島第1原発事故の損害賠償で、東電が被災者や被災した事業所などに支払った賠償金の総額は4兆6500億円を超える。このうち避難区域の商工業者に対する営業損害賠償は、国と東電が来年2月末までで打ち切る方針を示していたが、商工業者などの反発から素案の撤回に至った。業者は事業再建や資金繰りの悪化につながるだけに、再検討される賠償方針の行方を見守っている。一方、賠償をめぐっては、裁判外紛争解決手続き(ADR)の申し立てや訴訟が後を絶たず、被災者が抱える不公平感が背景として浮かび上がっている。

 被災者、被災事業所などの請求者と東電が合意に至った1月末時点の賠償総額は4兆6503億円。県の新年度当初予算案の約2.4倍に相当する。被災者個人への賠償額は約1兆6268億円で、このうち避難者らに支払われる精神的損害(慰謝料)の賠償金が約8147億円と半分を占める。

 自主避難などの賠償は約3630億円、2月で賠償が終了した就労不能損害は約2216億円となった。また、売り上げ減少などの損害があった事業所などへの賠償額は約1兆9203億円。個人と事業者に共通する財物賠償などは約1兆1031億円に上る。

 経済団体は補償、支援の継続求める

 原発事故で被害を受けた商工業者に支払う営業損害賠償の打ち切り方針が撤回されたが、県商工会連合会と県商工会議所連合会は、いずれも「賠償期間が見通せない状況に変化はない」と冷静に受け止める。県商工会連合会の轡田(くつわた)倉治会長は「もう少し先が見えるまで賠償を続けてほしい。政府がもっと前面に出て対応してほしい」と国の積極的な関与を求める。県商工会議所連合会の渡辺博美会長は「浜通りの企業が中通りや会津で活動するなど地域のくくりでの賠償が難しくなってきている。現場を丁寧に見て、補償や支援を継続してほしい」ときめ細かな支援を要請する。

 東電との交渉主導的役割 JAグループ対策県協議会

 県内の農畜産業35団体でつくるJAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策県協議会は、賠償をめぐる東電との交渉で主導的な役割を担う。2月までに2103億2700万円を請求、1977億4300万円の賠償金の支払いを受けている。支払率は94%。

 JAや農畜産業団体への賠償は二つの枠組みに分けられる。原発事故で農作物の作付けが制限されたり、風評被害で価格が下落した分の損害は、来年12月末までの賠償が決まっている。これまでの請求額は2051億8700万円に上る。一方、肥料や農薬の販売などの取引で得られるJAの収益の減収分は商工業者と同じく営業損害となり、51億4000万円を請求した。