原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所長・浜田愃氏に聞く

 
原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所長・浜田愃氏に聞く

「和解案で東電に説明し説得する努力をする」と話す浜田所長

 原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所の浜田愃所長に和解仲介の活動状況などを聞いた。

 --震災から丸4年になるが、申し立ての状況は。

 「昨年の申立件数は5217件で、前年比28%増加した。特に昨年1〜3月に件数が伸びた。原発事故で生じた損害賠償請求権の消滅時効を3年から10年に延長する特例法が成立したが、時効を心配した被災者の駆け込みが背景とみている」

 --申し立てを項目別で見るとどうか。

 「昨年は避難費用、精神的損害の両項目で、前年より30%以上増えた。賠償は期間を区切って支払われるため、避難が続く被災者は追加で請求している。その中でADRを経由する人が増えているのではないか。ある地域で避難費用が認められたと知り、別の地域の人も認められるのではないかと申し立てるケースもある。個人で除染した際の賠償も前年より伸びている。除染は広範囲に及ぶため、件数も増えるのだろう」

 --東電が和解案を拒否したケースもある。

 「和解案は、事故との因果関係などを審理し、中立・公正な立場から出したもの。東電は和解案を尊重するとしているのだから、受諾すべきだ。東電は『因果関係がない』との理由で、拒否はできない。センターとしても、東電に説明し、説得する努力をする」

 --今後の取り組みで方針は。

 「センターの存在が知られ、信頼感が増えてくれば、申し立ても増えるだろう。申し立てに必要な書類の不備などがないよう、しっかりフォローしていく。被災者の中には高齢者もいるので、申し立ての負担軽減にも取り組む。ADRは手続き費用がかからず、割と早く解決するので、必要とする被災者に利用してもらえるよう広報していきたい」

 はまだ・ひろし 広島市出身。一橋大商学部卒。2012(平成24)年から同センター調査官。同室長補佐を経て昨年12月から福島事務所長。68歳。