【私が描く「未来」・渡辺陽生さん】 信頼される救命士に

 

 「人のためになる仕事がしたい」。郡山市の国際メディカルテクノロジー専門学校1年生で、憧れの救急救命士を目指し、日々研さんに励んでいる。

 救急救命士を目指したのは震災がきっかけだ。中学校の卒業式を終え、友人と卒業を祝い合っていたさなかに地震が起きた。白河市の自宅に大きな被害はなかったものの、友人宅が被災したり、深刻さを増す浜通りの被害に卒業の喜びは一変、不安な気持ちを抱えながら高校に入学した。「もっと他の人のために何かできたんじゃないか」との思いも込み上げた。

 そんな中、災害現場で活躍していた救急隊の姿が思い浮かんだ。「人のために働けるこの仕事がしたい」。目標を見据えた高校生活は野球に没頭した。卒業後は救急救命士を育成する郡山市の専門学校に迷わず入学、自宅から車と電車を乗り継ぎ通っている。

 この1年間、人体の仕組みや疾患の症状などの基礎医学分野を中心に知識を身に付けた。これからはより実践的な内容を学ぶという。「あの時、何もできなかった自分への情けない思いが今でもある」と明かす。「人の命を救うことで福島に貢献する。地元の人から信頼されるような救急救命士になりたい」。その決意に揺るぎはない。