豊間中・校舎の解体決まる 津波で多くの犠牲、複雑な思い

 
豊間中・校舎の解体決まる 津波で多くの犠牲、複雑な思い

市と住民の話し合いで解体が決まった豊間中校舎

 いわき市の沿岸部、平薄磯地区にある豊間中は東日本大震災の津波の被害を受けた。使えなくなった校舎を「震災遺構」として保存するかどうかの検討が市と住民の間で行われたが、市は昨年12月、住民の意向を踏まえ解体を決めた。震災を風化させず語り継ぐための遺構だが、解体の結論に至った背景には、津波で多くの犠牲者を出した地区の住民だからこそ感じ得る複雑な思いがある。

 「犠牲者の家族から、悲惨な震災を思い出してしまうと、泣きながら訴えられた」。鈴木幸長副区長(62)は明かす。約260世帯の地区は顔なじみばかりだ。鈴木副区長は「最初こそ保存でもいいかと思ったが、遺族の意見は重いものだった」と振り返る。遺族の声以外にも「住宅再建が進んでいく上で遺構の近くに家を建てる心境は」「いわきの代表的な海水浴場としてにぎわいをつくる中で被災の跡を残すことはマイナスではないのか」など、さまざまな思いもあった。