橋や道路などの耐震化に「優先順位」 維持管理へ人材を育成

 
「産学官民で取り組む新たな枠組みが必要だ」と話す岩城教授

 震災で混乱した交通網。いつ起きるか分からない災害に備え、多くの被害や犠牲の上に得られた震災での教訓を生かし、災害に強いまちづくりの在り方があらためて求められる。

 コンクリート工学などが専門の岩城一郎日大工学部教授(52)は、橋や道路など県内のインフラの耐震化対策について「十分とは言い難いのが現状だ」との見方を示す。

 課題となっているのは財政状況だ。限られた財政の中で全ての構造物に耐震化対策を施すことは困難で「生命や生活に直結する橋や道路などに優先順位を決めて耐震化を進め、いかに100点に近づけるかが課題」と指摘する。

 また、インフラの老朽化という問題も重くのしかかる。岩城教授は、老朽化対策と耐震化が必ずしも同じではないとした上で、「安全、安心を担保する上でインフラの維持管理は欠かせない」と老朽化対策の重要性を強調。「日本では構造物の建設に偏重し、直すことに目が向いていなかった」。老朽化した構造物を点検・診断する人材の育成の必要性を説く。

 耐震化や老朽化などの対策をめぐっては、「人」と「金」が十分でない地方自治体ほど深刻だ。平田村では岩城教授の提案で、住民との協働で橋の清掃や日常点検など簡易な維持管理を行う「産学官民協働による橋守(はしもり)」を展開、無関心を関心、愛着につなげるよう意識改革に取り組む。「行政のみでは限界がある。産学官民で取り組む新たな枠組みが必要だ」