「大災害の教訓」胸刻む ガソリン、水...『万一』に向け取り組み

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震災直後、ガソリン不足に陥った本県。スタンドには車があふれた=2011年3月13日、福島市

 東日本大震災は、ガソリンや水、電気など、県民の生活に欠かせないライフラインを一時寸断した。交通網も混乱し、東京電力福島第1原発事故に伴う避難は困難を極めた。関係機関・団体による備えや、避難自治体の帰還に向けたふくしま復興再生道路の整備などは進んでいるものの、再び震災が起こったら―。全ての県民が5年前の教訓を胸に刻む中、"万一"に向けた取り組みは続く。

 【ガソリン】安定供給へ備蓄強化 タンクローリー増強など進む

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生後、県内では連日、ガソリンスタンド(GS)に長蛇の列ができた。ガソリンが底を突き「供給途絶」に陥ったGSも少なくなかった。県内のガソリン販売業者でつくる県石油商業組合は震災、事故を教訓に、各地域の供給を担う中核店舗の強化や、調達を担うタンクローリーの増強などを進めている。

 同組合によると、2012(平成24)年に石油備蓄法が見直され、災害時、石油元売り間の垣根を越えた連携が義務付けられた。また、同組合でガソリン供給の中核を担うGS約40店舗を決め、地下タンクを増強し備蓄機能を強化した。組合加盟業者のタンクローリーを計約30台増やして各地域に配備。道路が寸断されても、3~4日間分の備蓄が可能な体制を整えた。

 ただ震災後も、津波注意報が発令された際などには沿岸部でGSに車が殺到する光景が見られるなど、震災と同様の大災害が起きれば、ガソリンをめぐる混乱が再び繰り返されるのを懸念する声があるのも事実だ。同組合の小林勝専務理事は「こまめに給油することで、災害時の混乱を軽減できる」と呼び掛ける。

 【水・食料】断水、迅速に対応 「次の災害」官民で備え

 震災直後、県内の広い範囲で断水した。甚大な被害を受けた浜通りに加え、中通り北部、南部の市町村でも一時、水道供給が停止。水を求める県民が各地で給水車に長い列をつくった。

 行列ができた当時の状況を踏まえ、郡山市は市民がより身近な場所で水を確保できるような態勢を検討。震災前からあった耐震性の貯水槽に加え、市内12カ所の行政センターに組み立て式給水タンクの設置を進めている。タンクはコンパクトに収納できる上、組み立ても容易。断水が発生した場合には、組み立てた上で、水道局の給水車で随時水を入れ、市民が利用できるようにする。

 食料品も思うように提供されなかった。ヨークベニマル(郡山市)は「次の災害」に備え、本部と各店舗に無線を導入、各店舗の状況把握や迅速な意思決定をできるネットワークを構築した。

 本部の部長や担当者らで組織する緊急対策本部も設置。各店舗の店長らにスマートフォンを配置し、被災時の店舗状況を映像で伝える仕組みをつくり、県民への食料品の安定供給を目指す。

 【電気】帰還見据え電柱復旧 東北電力、訓練充実・即応態勢に力

 震災が発生した2011(平成23)年3月11日、地震と津波により県内で最大約35万戸が停電した。東北電力によると、福島支店管内の復旧率は翌12日が30%、13日が70%、14日が85%で、発生から4日目で停電は約5万戸に縮小した。津波で流失した地域と東京電力福島第1原発事故の避難区域を除けば、停電は11年4月28日に全戸で解消された。

 東北電は、震災を教訓に発電施設で災害による被害を抑えるための設備を強化したほか、現場の訓練を充実させ、大規模災害に備え即応態勢づくりに力を入れてきた。大熊町など原発事故の避難区域では、住民帰還を見据え老朽化した電柱などの電力設備の復旧作業や定期的な点検を進めている。

 発電施設については、11年7月の新潟・福島豪雨で被害を受け運転を停止した只見川流域の水力発電所を含め、昨年5月までに全て復旧。ただ、女川原発(宮城県)と東通原発(青森県)については、原子力規制委員会による審査が続いており、再稼働のめどが立っていない。

 原田宏哉社長は「現場の第一線は地域の復興を下支えしているというやりがいを感じている。今後も被災地に寄り添い、地域の成長や発展に向けて貢献することが経営の基本とあらためて胸に刻む」と話した。

 【通信】「大ゾーン基地局」でカバー NTTドコモ災害時専用

 震災では連絡手段も一時、途絶えた。携帯電話大手NTTドコモは震災時、東北の基地局が長時間の停電によってバッテリーが枯渇するなどの影響を受け、通信サービスを提供できなくなった。

 それを踏まえ、同社は災害対策を強化、災害時の通信の確保や利便性の向上を図ってきた。災害時専用で、広域をカバーできる「大ゾーン基地局」などを全国に設置。基地局が停電しない対策も取り、人口密集地や行政機関の通信を確保している。

 また被災地では、避難所などに衛星携帯電話を提供。またパケット通信を使った「災害用音声お届けサービス」を開発、音声通信がつながりにくいときでも、電話番号が分かれば、相手に音声データを送ることを可能にした。震災から5年を迎え、同社は3月にも、通信手段の確保に向けた新たな取り組みを発表する方針で、「災害時でもつながりやすい環境を目指していく」としている。