復興庁、問われ続ける指導力 見えぬ役割...設置期限はあと5年

 

 東日本大震災からの復旧・復興を担う「司令塔」として設置された復興庁は2012(平成24)年2月の発足から4年が経過した。長期化する東京電力福島第1原発事故からの復興には長い時間を要するが、復興庁の設置期限は21年3月まで。設立当初からの課題だった復興のリーダーシップをどう取っていくか、国全体の体制づくりが問われている。

 原発事故に見舞われた本県の復興は先が見通せない。避難区域からは昨年9月時点で県内外に約7万人が避難中だ。楢葉町は昨年9月に避難指示が解除されたが、町民7300人余りのうち戻ったのは、2月4日時点で440人にとどまる。仕事や生活の基盤が整っていないほか、原発事故への不安が依然として残ることも背景にある。

 政府の基本方針案では、原発事故対策は21年度以降も国が前面に立つとしている。ただ生活再建の前提となる除染や中間貯蔵施設の建設は環境省が担当しており、復興庁の役割は見えにくい。

 本県と岩手、宮城の3県ではプレハブの仮設住宅に約6万5000人(昨年11月時点)が暮らしており、5年弱で仮設住宅が解消した阪神大震災に比べ、遅れが目立っている。住宅は高台移転を原則とし、予定地の所有者捜しが難航、資材費や人件費も高騰し着工が遅れるケースが多発したことが背景にある。

 復興庁は裁判所や司法書士と協力し、土地収用手続きを迅速化。省庁横断的な支援チームを自治体に派遣して工費を柔軟に見直すなどして、事業はようやく進みだし、昨年末時点で災害公営住宅は予定の48%、高台移転の宅地造成も30%が完成した段階だ。

 政府は、今年1月に示した復興基本方針の改定案で、津波被災地の復興を20年度末までに「総仕上げする」としており、住宅は約3年で完成する見通しだ。住宅以外でもがれき処理や上下水道の復旧はほぼ完了し、漁港も7割が復旧した。しかし、被災者には今後の生活の不安が残る。

 「予算執行率」81.4% 15、16年度にピーク見込み

 これまでの本県など被災地での復興関連予算の執行状況は、2014(平成26)年度末現在で総額23兆9132億円に上る。

 項目別では、復旧・復興関連の7兆5809億円が最高で、産業の振興・雇用の確保が3兆8582億円、原子力災害からの復興・再生が2兆7534億円、被災者支援が1兆8130億円と続く。

 このうち事業別では、除染などの事業費が1兆6889億円、道路、農地など災害復旧関連の公共事業費が1兆6306億円、規模拡大など復興に向けた公共事業の事業費が1兆5376億円など。

 14年度までの復興関連予算の執行率は81.4%。復興庁によると、震災から間もない時期はインフラ復旧などが進まなかったが、徐々に軌道に乗り、予算の執行率が伸びているという。15年度と16年度にピークとなる見込み。

 「復興再生総局」13年2月に設置

 復興庁は、首相をトップとし、事務を統括する復興相を置く。その下には閣僚級の決定機関の「復興推進会議」を置いているほか、地方公共団体の長や有識者を構成員とする「復興推進委員会」で復興政策を審議している。

 出先機関として2012(平成24)年2月に発足した復興局は本県、岩手、宮城3県の県庁所在地に設置され、本県、宮城県を復興副大臣、岩手県を復興政務官が担当する。本県は南相馬、いわき両市に支所があり、岩手は宮古、釜石両市、宮城は気仙沼、石巻両市にそれぞれある。本県では、福島復興局のほかに環境省の福島環境再生事務所、原子力災害現地対策本部を統括する組織として13年2月に「福島復興再生総局」の事務局が置かれた。