廃炉作業で『大きな壁』 ロボット調査一進一退、第2段階計画変更

 
がれきの撤去が行われている3号機の原子炉建屋。通過するバスの中でも毎時420マイクロシーベルトが計測された=2月17日、東京電力福島第1原発

 極めて放射線量が高く人が入ることのできない原子炉格納容器内では、溶け落ちた核燃料(デブリ)の位置や状態などを把握するためのロボット調査が計画されている。1号機では昨年4月、ロボットによる内部調査に初めて成功したが、第2段階に当たる調査の計画変更を迫られるなど一進一退の状況が続く。

 東電などは1号機格納容器底部にたまる汚染水の濁りが予想以上に激しいため、第2段階として年度内に予定されていた水中ロボットによる調査方法を変更。2016(平成28)年度中の実施を目指す新たな計画では別なロボットを入れ、計測機器の付いたケーブルを水中に下ろしてデブリの大まかな位置などを探る。

 2号機の原子炉格納容器内の調査は、高い放射線量に阻まれ年度内の実施が困難になった。ロボットを投入する配管付近を繰り返し除染しても、放射線量は最大毎時8シーベルトと極めて高い。このため東電は、遠隔操作でのロボット投入も視野に計画を見直している。

 昨年10月に小型カメラによる内部調査が行われた3号機は、17年度前半にロボット調査が行われる計画。3号機は格納容器内にたまる汚染水の水位が高いため、水中ロボットを開発する必要がある。

 燃料 取り出し、3工法ともに難題

 事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す方法は廃炉に向けた技術戦略を担当する原子力損害賠償・廃炉等支援機構が昨年4月、格納容器内を水で満たす冠水工法、水を張らない気中工法など3工法を検討課題として提示したがそれぞれに難題を抱えている。

 放射性物質の拡散を防ぐ観点から選べば冠水工法が有力視されるが、格納容器内を水で満たすためには水の漏えいを止める止水技術の開発が大前提となる。また水で満たした場合の重さに原子炉が耐えられるのかも課題となる。

 一方、気中工法は冠水工法と比べてデブリの冷却や放射線の遮蔽(しゃへい)効果が期待できないため、冷却の可否や取り出し時の放射性物質の飛散を防止する対策が課題となる。

 廃炉作業の中長期ロードマップ(工程表)には、2017(平成29)年6月までに、デブリを取り出す大筋の工法を決めた上で、18年度前半までには工法を確定し、21年には1~3号機のいずれかで、取り出しに着手する方針が掲げられている。

 「使用済み燃料回収」放射性物質の飛散防止課題

 1~3号機の使用済み核燃料プールに残る計1500体以上の核燃料集合体の取り出しは、廃炉を安全に進めるための喫緊の課題となっている。各建屋では、放射性物質の飛散防止対策を講じながら作業が進められている。

 1~4号機で唯一、建屋上部が残った2号機では、早ければ今秋にも建屋上部位の解体作業が始まる。しかし内部には放射性物質がたまっており、解体作業に伴う放射性物質の飛散防止の徹底が課題となる。

 1号機では建屋上部を覆うカバーの解体が本格化、昨年10月に6枚あった屋根パネルの撤去が完了した。現在は側面の壁パネルを撤去するため、放射性物質の飛散を防ぐ散水設備の設置が進められている。

 各号機で最も早い2017(平成29)年度中の取り出し開始が予定されている3号機では今後、燃料取り出し専用のカバーと新たな燃料交換機が設置される。4号機は14年12月、プール内に残っていた燃料集合体の取り出しを完了した。