森林対策...重い課題 除染進まず、「里山の再生」帰還に必要

 
総面積の約8割が森林の飯舘村。山林に隣接する集落も多い=2月

 森林が総面積の約8割を占める飯舘村。「森林を除染しなくてはいけない。里山を除染しないことが、古里に戻れない理由になっている人もいる」。同村森林組合の佐藤長平組合長(64)は、全村避難を続ける村民の気持ちを代弁する。

 自宅の近くに里山を抱える集落も多い。「村民にとって里山は、キノコや山菜を収穫したり、散歩する場所だった」。原発事故後、線量が高い場所では木材の伐採や搬出が規制されており、「森林除染しないということは、働く場所がなくなるということ」。事業再開に向け、危機感を募らせる。

 佐藤組合長は「除染で山林の保水力が弱まり、災害の危険が高まる可能性もある」とも指摘する。それでも「里山は私たちの生活圏。地元の意見を聞き、ニーズに合わせて20年間の長期的な視点で除染していくべきだ」と訴える。

 県内線量は減少傾向

 原発事故で放射性物質が飛散した県内の森林の空間放射線量は、減少傾向にある。林野庁が昨年6月に県内の国有林195カ所で実施した調査によると、全体の平均値は毎時0.16マイクロシーベルトで、前年度比で0・04ポイント下がった。

 最も平均値が高かったのは、磐城森林管理署管内(36カ所)の毎時0・25マイクロシーベルト。地点別の最大値は、同署管内の毎時1.33マイクロシーベルトで、前年度比0.36ポイント下がった。

 全体では、8割の地点で前年度の測定値を下回り、2割はほぼ同じ値だった。調査は遊歩道や登山口などで、1メートルの高さの地点を測定した。

 「地元の意見反映を」 秋元公夫県森林組合連合会長

 県内の除染が進む中、課題として重くのし掛かるのが、より広い範囲での森林除染だ。政府は総合的な対策を検討するため、環境省と農林水産省、復興庁の3省庁で構成するプロジェクトチームを設置。3月にも対策案をまとめる方針だが、県森林組合連合会の秋元公夫組合長(68)は「われわれは地元の専門家。オブザーバーとしてでも会議に参加させてほしい」と求める。

 森林除染については、生活に密着した山林を新たに「里山」と位置付け、生活圏から20メートルよりも広範囲で除染を展開する方向で検討されている。里山の定義は示されていないが、秋元組合長は「住民が戻れる環境をつくるために『里山』として生活圏の除染を広げるという意味だと考えている。どこまで、どういう方法で除染するか、われわれの意見も反映させるべきだ」と訴える。

 秋元組合長によると、原発事故の影響が大きい双葉郡8町村で現在、山に入ることができるのは広野町と川内村だけ。「山そのものの除染は現実的ではない。その代わりとして、放射性物質対策と森林整備を合わせた『ふくしま森林再生事業』を継続して行うべきだ」。秋元組合長は"長期戦"を覚悟しながら、山林の再生に向けて取り組むつもりだ。