「屋外制限解除」広がる 校庭・公園に震災前の元気な姿戻る

 

 東京電力福島第1原発事故に伴って県内に広がった放射能汚染から、震災前の環境を取り戻そうと、各地で除染が進んでいる。子どもたちの屋外活動は、一部で自主的な時間制限などが残るものの、校庭や公園などには元気な声が戻ってきた。住宅や道路などでも除染が進む一方、県土の広範囲を占める森林対策は進まず、「里山」の再生を求める声は大きい。除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設は整備に向けた用地取得が難航しており、課題は山積している。

 【原町一小】0.69→0.09マイクロシーベルト毎時

 放課後の原町一小(南相馬市原町区)の校庭には、野球少年たちの元気な掛け声が響く。地元の軟式野球スポーツ少年団「原町ジュニアメッツ」。冬場の現在は週2回、寒さにも負けず、伸び伸びと体を動かしている。

 震災直後、子どもたちの屋外活動を制限した南相馬市は小、中学校の屋外活動について、全ての学校の除染作業が完了し、モニタリングの結果から空間放射線量の低減が図られていることを確認。2011(平成23)年10月からは1日2時間以内、12年1月からは1日3時間以内とするなど、段階的に制限時間を拡大してきた。線量は低い値で推移していることもあり、12年4月からは体育や野外観察、部活などの屋外活動に特に制限を設けていない。

 同スポ少が活動する原町一小の線量は、原発事故から約5カ月後の11年8月1日は屋外で毎時0.68マイクロシーベルト。その後は低下を続け、今年3月1日現在では毎時0.09マイクロシーベルトとなっている。

 同スポ少の佐藤英雅監督(46)は「震災後の一時期は練習場所がなく、練習のため市外に出掛けたこともあった」と、屋外活動が制限されたことを振り返る。

 チームには現在、1~6年の計21人が所属、活躍を夢見て日々、練習に励んでいる。「屋外での練習だが、線量に関して言うことはない」と佐藤監督。震災、原発事故から5年、外で元気に活動する子どもたちの姿は、本県が震災前の姿を取り戻しつつある証しかもしれない。

 【福島・十六沼公園】2.0→0.15マイクロシーベルト毎時

 福島市大笹生の十六沼公園の空間放射線量は2011(平成23)年4月、サッカー場で毎時2.0マイクロシーベルトを観測。その後、12年8月に除染を行い、現在は毎時0.15マイクロシーベルトまで低減した。子どもたちが体を動かすことができる環境づくりに向け、市は同公園内に今年8月、人工芝の屋根付き運動場を新たにオープンする。

 除染されていない場所での子どもの活動に、保護者にはまだ、不安が残るのも事実だ。長女(3)と同公園に遊びに来るという同市の主婦(40)は「自宅近くで散歩を楽しみたいが、ホットスポットが怖くて自粛している。除染された公園でしか遊ばせていないし、帰宅後のうがい、手洗い、足洗いは欠かせない」と話した。

 【いわき・三崎公園】0.58→0.07~0.14マイクロシーベルト毎時

 いわき市内でも有数の面積を誇る三崎公園。市によると、同公園の空間放射線量は2011(平成23)年4月には毎時0.58マイクロシーベルトだったが、昨年11月の測定時には地点により毎時0.07~0.14マイクロシーベルトまで低下した。管理するいわき市公園緑地観光公社によると、海からの潮風の影響からか放射性物質の地上への降下が少なかったとみられ、除染が行われた市内の他の公園に比べて比較的低線量で推移したという。

 それでも、12年までは来場者が著しく減少したという。13年以降は徐々に増加傾向で「震災前と同じか、若干下回る程度」に回復。ただ、津波の影響で、磯遊びを楽しめるスペースは、使用できない状態が続いている。

 【猪苗代】0.15→0.05マイクロシーベルト毎時(線量は猪苗代町役場)

 猪苗代町は、2011(平成23)年5月の町役場の空間放射線量が毎時0.15マイクロシーベルト前後で、ホットスポット以外は除染を行っていない。今年2月は雪がない場所でも毎時0.05マイクロシーベルト前後。線量が低いことから震災以降、屋外活動を制限された子どもたちの遊び場として活用されてきた。

 1万人以上の子どもたちを受け入れてきたNPOこどもの森ネットワーク(同町)の橋口直幸理事長(56)は「それぞれの地元で、外遊びの環境を見つめ直す時期にきている」と指摘。県内各地の公園で除染が進んでいることを踏まえ、「保護者が線量を知り、滞在時間に制限を設けるなど『正しく怖がる』必要がある」と、遊びの場確保の大切さを語る。

 【西郷・甲子高原こども運動広場】0.30→0.07マイクロシーベルト毎時(線量は那須甲子青少年自然の家)

 西郷村は、原発事故後の子どもたちの体力低下に歯止めをかけようと、同村真船の国立那須甲子青少年自然の家の近くに村甲子高原こども運動広場を完成させた。村によると、昨年8月のオープンから延べ約2000人が利用している。

 同自然の家の空間放射線量は、毎時0.30マイクロシーベルト(2011年6月)から毎時0.07マイクロシーベルト(今年2月)に低下。村役場周辺などに比べて放射線量が低いとして、甲子高原に整備した。合成ゴムシート舗装を施した400メートルトラックと人工芝のフットサルコート2面を備え、標高約900メートルで高地トレーニングにも利用できる。村によると、利用者は県内各地の小、中学生が多い。