「心のケア、支援継続を」 相談増加傾向、5年たちさらに高まる

 

 臨床心理士や保健師など専門家チームが避難者の心の問題などに応じる「ふくしま心のケアセンター」(福島市)は、2012(平成24)年2月から3年間の活動報告をまとめている。

 身体症状を訴えるものが最も多く、訴える人は年々増加傾向にある。2番目に多かった気分・情動に関する症状も増加傾向で、同センターの内山清一副所長は「避難による居住環境の変化と家族構成の変化が大きく影響しており、時間が経過しても相変わらず状況が変わっていないことを意味している」として、引き続き支援が必要なことを強調した。

 同センターは、避難した自治体の職員や、避難者を見守る生活支援相談員に対する心のケアも重視。「本来国や東京電力が応えるべき不平や不満の矢面に立っている行政職員や、避難者の深刻な悩みに直面している相談員の疲弊は、5年がたちさらに高まっている。支援者側への支援が求められている」と語った。

 新たな問題へ人材確保 臨床心理士・成井さん

 NPO法人ハートフルハート未来を育む会(郡山市)理事長で臨床心理士の成井香苗さん(63)は、震災から約5年後の県内の子どもについて「音や揺れなど環境の変化に過敏に反応して落ち着きがなくなって衝動的、多動的となる傾向にある」とみる。

 放射線への不安は「徐々に小さくなってはきている」とするが、言語を習得する以前に震災や原発事故を経験した子どものトラウマが、今になって心と行動に影響を及ぼしているという。
 この中には震災の経験が原因であることに気付かれにくいケースもある上、発達障害との見分けが困難として「違いを見極め、適切な対応が必要」と指摘した。

 「ストレスに立ち向かう心の強さと、自己肯定感を高めることが必要」と、心理教育の充実も訴える。今後に向けては「震災から5年以降には新たな問題が出てくることが予想される。不足している心理士や保育士ら支援者の人材確保など、現状に即した対処が求められる」と力を込めた。