長引く避難生活で弊害 「メタボ率」全国3位、健康指標が深刻化

 

特定健診でメタボリック症候群に該当した県民の割合の推移をみると、震災前の2010(平成22)年には15.2%で、都道府県別で14番目の多さだった。しかしその後、全国では年々同症候群の割合が減少しているのに対し、本県は東日本大震災が起きた11年度は10位(15.8%)、翌12年度4位(16.3%)、13年度3位(16.5%)と増え続け、全国順位が悪化した。県健康増進課は、震災や原発事故による避難で環境が変わったことが影響していると推測する。

 同症候群は、ウエスト周囲径(へその高さの腹囲)が男性85センチ、女性90センチを超え、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち二つに当てはまると診断され、循環器系疾患や脳血管疾患、心疾患に関連するとされている。予防することが大切で、同症候群と診断された場合は適切な運動と食事で改善していく必要がある。同課は、早く起きてウオーキングをする、電車通勤などで1駅分歩く、野菜を多めに取るなど、県民それぞれが同症候群を意識して行動することの大切さを指摘している。

 国の国民生活基礎調査では、本県の喫煙率も震災後増加した。県によると10年まで県内の喫煙率は低下傾向にあり、男性36.2%(全国平均33.1%)で全国3位、女性10.5%(同10.4%)で全国12位だった。しかし震災後は増加に転じ、13年は男性38.9%(同33.7%)で全国4位、女性が12.1%(同10.7%)で全国5位に急増した。

 長期避難による生活習慣の変化などを背景に、震災前から悪かった県民の健康指標はさらに深刻化し、対策が急がれている。

「メタボ率」全国3位

 南相馬・相馬、糖尿病発症1.6倍

 日英の研究者が2月に発表した研究では、南相馬と相馬両市で、糖尿病と高脂血症の発症が原発事故後に高くなったとの結果が明らかにされた。避難した人の糖尿病の発症割合は事故前の約1.6倍となった。

 原発事故前後の2008~14年に特定健康診断(対象は40~74歳)を受診した2市の6406人のデータを分析。事故当時避難区域に住み、現在も避難している人のグループと、避難していない人(事故後一時的に避難した人を含む)の2グループに分け、健診の採血結果や投薬を受けているかどうかで疾患の有無を調べた。

 糖尿病は避難者で13年以降、約1.6倍に増え、避難していない人も約1.3倍に増えた。高脂血症は避難者で事故翌年の12年以降に上昇、14年は事故前の1.2倍になった。避難しなかった人も13年以降に増加した。高血圧は事故前後で大きな変化はなかった。研究チームは「人間関係や仕事など生活環境の変化が影響している可能性がある」とした。

 福島医大が新学部、医療従事者養成へ

 県民の健康指標の悪化を受け、県は2021(平成33)年4月、福島医大に保健医療従事者を養成する新学部を設置する計画だ。

 新学部は4年制で、リハビリテーション治療などを行う理学療法士と作業療法士、放射線検査などに当たる診療放射線技師、血液や病理学などの検査を担う臨床検査技師を養成する4学科を設置。福島市のJR福島駅前に校舎を建設する。

 福島医大の菊地臣一理事長は「急速に悪化した健康指標は短期間なら戻せるが、長く続いてしまえば戻せない」として、早期設置の必要性を強調している。