住宅修繕、期待と不安 業者不足、着工3カ月遅れ「やっと」

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住宅修繕、期待と不安 業者不足、着工3カ月遅れ「やっと」

約3カ月遅れで新築工事が始まったが、「工事が終わるまで時間がかかるだろう」と話す遠藤さん=楢葉町下小塙

 政府が、楢葉町の避難指示を9月5日に解除する方針を同町に伝えたことで、帰還を望む住民は古里での暮らしの再開に向け準備を進めている。政府は、他の居住制限、避難指示解除準備の両区域の避難指示について2017(平成29)年3月までに解除する方針を明らかにしている。ただ、避難区域の住宅はほとんどが傷んでいる。一方で施工業者の不足などから「修繕工事に着手できるのは相当先だろう」と懸念する声もある。避難指示が解除されても自宅に住むことができる状態になるまで時間がかかる可能性もある。

 避難指示解除に伴い、古里に戻ることを決めていても、住宅の新築やリフォームが思うように進まない人たちが多くいる。

 「ここが玄関で、こっちが台所。ここはお父さんと私の部屋になる予定。でも業者の都合で、約3カ月遅れでやっと工事が始まった。恐らく工期は延びるだろうね」。楢葉町で生まれ育ち、家族と暮らし続けてきた同町下小塙の遠藤さち子さん(66)は、半ば諦め顔だ。

 遠藤さんは、地震で半壊した離れを壊して新築する。完成を待ち遠しそうに、基礎工事の様子を見詰める。一部が損壊した母屋は既にリフォーム業者に修繕を依頼した。瓦や台所などは直すことができたが、外壁塗装は施工業者が忙しく、工事が予定よりも1年以上遅れたという。避難指示が解除になれば、母屋に息子夫婦が住み、遠藤さんは夫の進さん(64)と新築する離れで再出発する予定だ。

 離れの新築工事は今年2月、建築業者に依頼した。4月1日に着工予定だったが、いつになっても業者から連絡が来ず、更地のまま時間だけが過ぎた。やっと業者が工事の手配を始め、着工したのは6月25日。完成予定は9月末だというが、業者は町内の複数の工事を請け負っており、遠藤さんは「完成までには時間がかかるだろう」と話す。

 震災と原発事故の影響で、遠藤さんの家族は会津美里町やいわき市の応急仮設住宅、借り上げ住宅などにそれぞれ避難した。「指示が解除され、新築が完了すれば、4年ぶりに家族みんなで暮らすことができる。本当にうれしい」と話す一方、「(工期予定の通りに)しっかりとやってもらえるといいけど...」と浮かない表情だった。

 高額な費用請求危惧 川内の需要は落ち着く 

 住民の住宅需要を見込み、積極的に営業をかける住宅メーカーの動きが出ている。楢葉町によると、ある住宅メーカーから「新築やリフォームに関するセミナーを仮設住宅で開催したい」という打診があったという。この時は、参加者が集まらなかったため開催は見送られたが、メーカーの営業攻勢は活発化している。

 楢葉町以外の町村の仮設住宅などでも住宅建築に関する営業活動の姿はあるという。ほとんどの業者は正当な営業を行っているが、ある行政の担当者は、「施工業者がいなくなってしまうのではないか」という住民の焦りにつけ込み、高額な修繕費用を取る業者が出てこないか危惧する。住宅再建が進むようサポートする一方、不利益が生じないよう、行政は気を配っている。

 一方、昨年10月に村内の一部で避難指示が解除された川内村では、解除前の住民懇談会などで住民から「住宅修繕が間に合わない」という声が上がったが、解除から半年以上が過ぎた現在はこうした声も少なくなっている。村内には解除後、原発事故の避難者向け復興公営住宅が完成した。6月からは入居も始まり、住宅の修繕が進んでいない住民も自宅近くでの生活が可能になった。

 ただ、避難指示が解除された旧避難指示解除準備区域で、古里に戻るため住宅を新築する動きも出てきており、村内の建築業者が少ないこともあり、住宅の建設や修繕では順番待ちも出ているという。

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