復興へ財源確保は 「道路整備」中心、本県負担は69億円

 
復興へ財源確保は 「道路整備」中心、本県負担は69億円

 政府は財政健全化に向けて、来年度から被災自治体に復興事業の一部負担を求める方針を示している。本県は、東京電力福島第1原発事故の被災県という特殊性が考慮され、負担額は大幅に圧縮されているが、住民が避難を続ける浜通りを中心とした被災市町村の厳しい財政状況に変わりはない。東日本大震災から4年半。 復興予算に頼りながら、不透明な先行きに不安を募らせる被災市町村の実態が浮かんでくる。

 政府は、来年度から2020(平成32)年度までの5年間を「復興・創生期間」と位置付け、復興事業の一部で地元に財政負担を求める方針だ。11〜15年度の「集中復興期間」は国が26兆3000億円に上る財源の枠組みを確保、被災地の復興事業費を全て負担してきたが、財政健全化のため方針が転換される。ただ、被災地の財政力に配慮して事業費に対する地元負担率は1.0〜3.3%に抑えた。本県と宮城、岩手両県の負担額は5年間で計約220億円で、本県と県内の市町村を合わせた5年間の地元負担額は69億円程度となる見通しだ。

 政府が地元負担を一部で導入するのは、地域振興策や将来の災害への備えなど全国共通の課題に対応する事業が挙げられる。本県の場合は、東北道より西側で行われる道路整備が財政負担の中心となる。

 原発事故に由来する復興事業や東北中央道「相馬福島道路」の整備、防災集団移転など復興の基幹的事業は全額国費負担を継続する。政府が当初、原発事故で避難指示が出た12市町村で県が行う事業と相馬福島道路の整備にも地元負担を導入する考えを示したことを受け、県は負担額が410億円程度になると試算していた。

 県と復興庁が協議した結果、原発事故への対応に必要な事業と認められ、負担が軽減された。来年度から5年間の復興事業費の枠組みについて、政府は総額6兆5000億円を見込んだ。このうち3兆3000億円を復興特別所得税の上振れなどで確保、残りの3兆2000億円を一般会計からの繰り入れや政府資産の有効活用などで捻出する。

 見通し不透明...自治体「不安」

 原発事故に伴う住民避難などで税収が大きく減った被災市町村。全町避難が続く富岡町と避難指示が解除され住民帰還を進める広野町の財政から、被災市町村の財政状況を見る。

 【富岡町】全町避難が続く町は震災前と比べ税収は半減しており、減収分に国の交付金が充てられている。町の担当者は「国の交付金に頼るところが大きいが、見通しが不透明なため、帰還後に打ち切られる恐れがある」と懸念する。

 町は避難指示に伴い町民の固定資産税を100%近く減免しているほか、生活再建のため住民税の課税額を所得に応じて減免。軽自動車税についても、町内から車を持ち出すことができなかった町民を減免対象にしている。町は早ければ2017(平成29)年4月に帰還を開始する。税収を確保して帰還後に円滑な行財政運営を図るため、町民の古里への思いを維持する取り組みが必要との考えだ。

 【広野町】住民帰還を進める町は昨年度から、普通交付税の支給を受けない不交付団体となった。町の試算では今後5年程度は不交付団体が続く見通しだ。

 東電広野火力発電所6号機増設による固定資産税増が主な要因だが、福島第1原発事故の廃炉や双葉郡で進む除染作業を背景に、作業拠点となっている町内の個人、法人所得が伸びたことや企業進出で住民税と法人税が増えたことも要因の一つになっている。

 不交付団体となり、財源は確保されているようにも見えるが、町の予算の大部分は復興予算が占める。町の担当者は「今後の避難指示解除などで町の状況は大きく変わる。楽観視はできない」と説明する。