増えぬ生活支援相談員...短期雇用悩み 身分保障に不安定さ

 
仮設住宅を訪問し、健康や心のケアに携わる星さん。生活支援相談員の人員確保は急務だ

 「復興公営住宅や新築住宅などに住居を移す避難住民が増えており、仮設住宅では独居高齢者や高齢者夫妻が残り、孤立していくことが懸念されている」。大熊町の生活支援相談員を務める星良樹さん(34)は現状を語る。

 いわき市好間工業団地内にある大熊町社会福祉協議会いわき連絡所では平日の夕方、生活支援相談員が訪問した避難住民の報告書を作成する姿がある。21人の相談員は日中、同市内で避難生活を送る約1800世帯の住民宅を訪れ、健康状態などを確認し、緊急を要する場合などは個人情報に十分配慮しながら、町に報告している。「個々の世帯で問題は違うが、運動不足による健康不安やストレスが深刻化している」。相談員総括チーフも務める星さんは話す。

 高齢化の課題の一方、避難のストレスなどを和らげ、孤立化を防ぐ大きな役割を担う相談員の人員不足が慢性化している。同いわき出張所の現在の人員では各世帯を2カ月に1度訪問するのが限界で、目標とする1カ月に1度の訪問は困難な状況だ。1年ごとの短期雇用という身分保障の不安定さが、人員確保を難しくしている要因の一つだ。大熊町社協いわき連絡所の吉田利孝所長(63)は「高齢者世帯の増加などから相談員の果たす役割は増している。県も長期雇用できるよう、国に対し財源確保を求めているが、早急な対応が必要だ」と訴える。

 身近に暮らす「いるだけ支援」

 福島大災害ボランティアセンターの三浦恒彦さん(21)=同大4年=は9月から、浪江町民が暮らす福島市飯坂町の北幹線第1仮設住宅での生活を送っている。三浦さんは、仮設住宅に住んで避難住民をサポートする同センターの「いるだけ支援」として避難住民と同じ環境で暮らしている。

 住民たちとのラジオ体操も日課になった。「孫の顔を見ながら家族で一軒家に住んでいた高齢者の皆さんが、知らない土地で避難生活を続けることは心身ともに相当な負担になっているはず」と考える。

 いるだけ支援は、高齢者が多い仮設住宅の住民と世代間交流などを図りながら、引きこもりや孤独死の防止などにつなげようと始まった。仮設の2戸に学生が2~3カ月交代で住み、大学に通いながら住民を支援している。

 三浦さんは北海道北広島市出身。高校2年の時に東日本大震災が起きた。「自分に何かできることはないか。今、福島に行かないと後悔する」と衝動的な思いに駆られる中、災害ボランティアセンターの活動を知り、福島大に進学した。得意のピアノを生かし、仮設住宅での慰問活動に取り組んできた。

 今後は、仮設住宅での芋煮会や音楽会の開催を計画している。「一人でも多くの住民と会って話をして、今まで外に出にくくなっていた人が出てきてくれたり、自分たちが住民同士の交流のきっかけになれば」と三浦さんは話す。

 これまでのボランティア活動を通して三浦さんは「今後、帰還できる地域が増えていく中で、(帰還の)決断を急かされていると感じている住民も少なくない」と指摘する。「住民の選択の自由を奪うことなく、温かく見守っていくことが大事ではないか」と考えている。