第1原発・廃炉現場、労働環境改善へ評価や今後の課題聞く

 

 30~40年とされる福島第1原発の廃炉に欠かせない労働環境の改善について、県廃炉安全監視協議会労働者安全衛生対策部会長を務める玉根吉正県危機管理部政策監(55)、東電福島第1廃炉推進カンパニーの河合雅彦副責任者(56)に評価や今後の課題を聞いた。

 県廃炉安全監視協議会労働者安全衛生対策部会・玉根吉正部会長

  ―第1原発の労働環境改善への評価を。
 「汚染されたがれきの撤去や表土の舗装などで放射線量が下がり、作業員の被ばく低減につながっている。これにより全面マスクの着用範囲が縮小、作業中の意思疎通や広い視野が確保され、労働安全の向上が図られている」

 ―一方で、今年は作業員2人が労災で亡くなった。
 「1、8月に作業員が亡くなる大変残念な事故が起きた。何より大切なのは作業員の安全。今後も溶融燃料(デブリ)の取り出しなど困難な作業が予想される。東電には徹底した線量管理、安全対策が求められている」

 ―東電の取り組みをどう監視していく考えか。
 「本年度は協議会の委員に労働安全の専門家を追加委嘱した。被ばくや医療などさまざまな専門家の知見を生かして監視し、労働環境の改善に必要なことは東電に積極的に申し入れていきたい」


 東電福島第1廃炉推進カンパニー・河合雅彦副責任者

 ―労働環境の改善は進んだか。
 「除染やアスファルト舗装などの放射線低減策で1~4号機の建屋周辺以外は全面マスクが必要なくなった。より簡素な装備で作業可能な場所も新たに設定し、今後はさらに増やしていく。大型休憩所や給食センターも開所し、温かい食事も取れるようになった」

 ―作業員の声をどう聞いているか。
 「年1回のアンケートを行っており、相談窓口も設置した。廃炉に関わる事業者の協議会から出た意見も改善に生かしている。アンケートでは年々、作業環境が改善したという回答が増えている」

 ―今後の課題は。
 「長期的な廃炉を安全に進めるため、構内を普通の職場に戻すことが目標だ。誇りを持って仕事ができる場所にするためにも、作業員の声を聞き、環境改善に使命感を持ち取り組んでいく」