【ニュースを追う】台湾の輸入規制 『食の安全』理解が必要

 

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故に関連したニュースについて、その背景や「今後どうなるのか」などを探る。初回は、本県などの食品に対する台湾の輸入規制について現状を追った。

 「政権発足後、しっかりと対応する」。台湾で5月に新政権を発足させる民主進歩党の黄志芳国際事務部主任は、本県などが求めた食品の輸入規制解除についてそう返答した。

 原発事故を機に台湾が実施している日本産食品の輸入規制で、対象となっている本県と茨城、栃木、群馬、千葉の5県幹部が3月21日、同党本部を訪れ、規制解除を求めた。黄氏は日本の食の安全確保への取り組みに理解を示したという。しかし、本県から要請に参加した畠利行副知事は「決して(状況は)前向きとは言えない」と楽観視していない。

 新政権発足は5月で、政権が軌道に乗るまでは引き続き規制緩和へのアプローチが必要。加えて、台湾では廃油が食用油として販売されていた偽装問題などを背景に、「食の安全」に対する国民の厳しい目線が注がれており、輸入規制の緩和には台湾国民への理解浸透も欠かせない。楽観視できないという理由はそういったことにある。

 本県産食品について、台湾政府は2011(平成23)年3月から、酒類を除く全食品の輸入を禁止している。

 一方で、台湾は原発事故前、香港と並び県産モモやコメなどの主要輸出先で、08年度は115トン、09年度は76トン、10年度は21トンの実績がある。台湾の輸入規制解除は、本県にとって大きな壁であり、願いでもある。畠副知事は「食や観光などに関する、客観的で正確な情報を継続して発信しなければならない」と、引き続き台湾に働き掛ける考えだ。