【起き上がり小法師】〔南相馬・浦島鮨〕おいしさに『強い信念』

 
「おいしい料理を提供していくことが大事」と誓う山沢さん(右)

 避難指示が7月12日に解除された南相馬市小高区にあるすし店「浦島鮨」は今春から、避難指示解除に先駆けて営業を再開した。店主の山沢茂さん(64)が同市原町区から通いながらすしを握る。

 山沢さんは都内で修業を終え、故郷に戻って1976(昭和51)年に開店。新鮮な魚介類と地元産米による上質なすしを手ごろな価格で提供し、人気を博していた。震災前はすし店としてだけでなく、宴会場も備え、職人を数人雇っていた。しかし、「避難指示が解除されてもこれまでのように多くの人が利用することはないだろう」と、山沢さんと長男の政教さん(41)の2人で握り、家族と職人1人で切り盛りできるよう改修した。

 常磐線は原ノ町―小高駅間が避難指示解除日の先月12日に運行を再開したものの、小高発原ノ町行きの終電は午後8時20分。タクシーや運転代行も台数が限られ、小高区ではなかなか利用するのが厳しい。「夜の営業では早い時間帯から飲食を始め終電に間に合わせないといけないとなると、お客さんたちも慌ただしくなってしまう。終電がもう少し遅い時間になれば、お客さんの足として助かる」と感じている。それでも「おいしい料理を提供することが何より大事」と強い信念ですしを握り続ける。

 場所は震災前と変わらない南相馬市小高区東町1の131。営業は午前11時~午後2時と午後5時~同9時。定休日は火曜。