【ニュースを追う】被災地と報道「議論」 災害、誰に何を伝えるか

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震災報道の在り方について意見が交わされた分科会=9月、福岡市

 福岡市で9月末に開かれたマスコミ倫理懇談会全国協議会の全国大会で、災害報道に関する分科会が設けられ、メディアが被災者とどう向き合うかについて議論が交わされた。震災を取材する記者の思いなどを通して、災害について誰に、何を伝えるべきなのか、改めて考えさせられた。

 議論は、4月に熊本県で発生した熊本地震での事例を中心に展開された。このうち、熊本地震で被害が大きかった益城(ましき)町を取材した熊本日日新聞社会部の後藤幸樹記者は「想像以上に被災者は疲れており、被災者はマスコミにうんざりしていた」と地震直後を振り返った。別の出席者からは「中継車の給油の割り込み」「無断撮影」などメディア批判の事例も紹介された。

 一方現在、後藤記者のもとには「熊本地震に関する報道が少なくなり、取り残されているように感じる」という被災者の声が伝えられており、取材し、発信し続けることの大切さも感じているという。

「配慮と遠慮は違う」 分科会の席上、熊本大法学部の鈴木桂樹教授は、被災者との向き合い方についてこんな表現を使った。「配慮と遠慮は違う」。自身も熊本地震の被災者である鈴木氏は「取材に応じた被災者に遠慮して、しっかり取材をしないことは、被災者の意にも反する」と強調した。

 被災者のプライバシーなどに配慮しながら、いかに災害の記録を残し、後世に伝えていくか。ひとたび災害が起きれば、現実的にそんな考えは飛んでしまうかもしれないが、意識を持たなければメディアの存在意義を見失ってしまうのではないか―と自戒した。