遠くへ...車で避難『道路渋滞』 11月22日・福島県沖地震で課題

 
車が列を作った広野町役場前の国道6号=11月22日午前6時15分ごろ、広野町下浅見川

 本県沖を震源として11月22日早朝に発生したマグニチュード(M)7.4の地震で、沿岸部の一部道路は避難をする人らの車で列ができ、渋滞が起こった。東日本大震災の教訓が生かされ、早急な避難は行われたものの、どのような手段、ルートで避難をすべきか、改めて課題となった。

 11月22日の地震・津波に伴い、いわき市では各地の幹線道路で交通渋滞が発生した。沿岸部から内陸部に向かう道や平時から混雑する道、避難所周辺などでスムーズな移動が困難な状況だった。

 市地域防災計画では、大地震で道路が損壊したり、建物が道路側に倒壊するなどして車が通行できなくなることを想定し、避難は原則徒歩と定めている。震災の時には、車で避難しようとした途中で立ち往生し、犠牲になった人も数多くいた。しかし、今回も多くの市民が車での避難を選択した形。

 交通渋滞の原因は検証中だが、市担当者は、同市への津波到達予想時刻が「すぐ来る」と発表されたことを踏まえ、「より遠くへ、と思って車を選んだのでは。早朝の時間帯で、そのまま通勤することを考えた人もいたと思う」と推測する。また、津波による車の被害には保険が適用されないため、「震災で一度車を流された人は、財産を守りたい意識が働いたのかもしれない」と理解を示す。

 利便性高く、対応求める声

 今回の対応をめぐっては同市12月議会一般質問で市議から質問が相次ぎ、「車は移動に便利というだけでなく、避難先でのプライベートスペースであり、ラジオやカーナビは情報源。車による避難を制限するより、車による避難を前提として対策を講じるべきではないか」などの指摘があった。

 市担当者は、車による避難の利点を理解した上で、「原則徒歩を変えることは難しい」とする。車での避難は道路を通行できることが前提となり、市などが通行可能と確認した後では避難開始時間が遅れてしまうためだ。ただし、今回の交通渋滞発生という現状を踏まえ、市は今後、車による避難訓練を検討する。

 一方、今回の地震・津波で避難所周辺が混雑したことについて、市担当者は「多くの人が逃げるという行動を起こしてくれた。『高台へ、遠くへ』という観念や、避難所の場所が周知されたことの表れでもある」と受け止め、「現在取り組んでいる『共助』の体制づくり、地区ごとの防災計画づくりを進めたい」とした。

 「浸水区間」避け迂回路『混雑』

 本県沖を震源とする11月の地震では、浜通りを南北に貫く大動脈の国道6号が避難路として活用された。一方、迂回(うかい)路の県道いわき浪江線(通称・山麓線)にも通行車両が集中したことで一部に渋滞が生じ、緊急時の避難路確保について課題が浮き彫りになった。

 国道6号は東日本大震災で沿岸部のいわき市四倉から同市久之浜町にかけて津波被害に遭った。これに対し、国道6号より西側(内陸)を並走する山麓線は、いわき市を起点に、現在は原発事故に伴う帰還困難区域で通行止めとなっている大熊町まで通じており、浜通りと中通りを結ぶ国道288号に接続する。

 11月の地震に際しては、津波警報が出されたことを受け、国道6号の浸水区間を回避して山麓線へ向かう車が相次ぎ、渋滞になったとみられる。朝の避難する人の車と、同市から双葉郡に通勤する人の車によって交通量が膨らんだ。

 地元住民の間では「山麓線は国道6号と比べ信号機が少ないが、起伏があってカーブが多いため、交通量が増えれば渋滞になりやすいのではないか。道路環境を改善する必要がある」との声が上がっている。