【起き上がり小法師】〔二本松・アクセスホームさくら〕店構える夢抱き

 
二本松で菓子製造などに取り組む利用者やスタッフら

 指定障害福祉サービス事業所を運営し、利用者は19人。浪江町から二本松市に避難して始まったラスクを中心とした菓子製造販売が軌道に乗ってきた。

 菓子作りはやったことがなく、形になるまで時間がかかった。渡辺幸江理事長(59)は「商品を売るまで大変だった。無我夢中で、前に進むしかなかった」と振り返る。各地からノウハウの支援を受け、授産施設の利用者らが作った製品を販売するイベントやインターネットなどを通じて売り込んできた。世間の目も「支援の注文」から「おいしい注文」に変わってきた。

 震災や原発事故で全町避難を余儀なくされる中、利用者は一時離れ離れになった。スタッフが利用者の避難先を回り「みんなに会いたい」「仕事をしたい」と一日も早い再開を求める要望を受け、アクセスの良さを考えて事業所の場所を選んだ。震災発生からわずか5カ月後の2011(平成23)年8月には二本松で事業を再開。菓子作りのほか、従来からの自動車部品の組み立てにも取り組む。

 利用者の工賃は県平均を上回る。渡辺理事長は「利用者の励みと自信につながっている」と、みんなが生きがいを持って仕事をしていることを強調する。さらに利用者の一層の工賃向上と社会参加の促進を図るため、販路拡大や施設外就労について行政などからの支援を求める。

 「(浪江に)戻っても、どれぐらいのニーズがあるのか分からない」と渡辺理事長。店を構えたい夢を抱き、利用者やスタッフらと共に二本松での作業を継続していく。