『双葉の医療』充実...帰還・復興へ不可欠 稼働は2割・16施設

 

 東京電力福島第1原発事故による全町避難が続く浪江、富岡両町の避難指示解除が目前となるなど、双葉郡の再生に向けた動きが進み出しているが、一方で住民が心配するのは医療環境だ。古里へ戻るための条件として医療環境を重視する声は多く、双葉郡の復興に医療態勢の充実は不可欠だ。

双葉郡で再開または新たに開設する医療機関など
 震災前、双葉郡8町村では病院、診療所、歯科診療所合わせて80施設が稼働していたが、現在、稼働しているのは約2割に当たる計16施設。特に手術や入院に24時間対応できる2次救急病院がなく、県は富岡町王塚に「県立ふたば医療センター(仮称)」の建設を急ぐ。開院は2018(平成30)年4月の予定だ。

 同センターの診療科目は救急処置を中心に、自宅で生活できない患者のリハビリ支援も行う。病床数は避難指示解除後の推定人口などを基に30床と想定。診察室やリハビリテーション室、薬局などを設ける。17年度の県予算に事業費23億6000万円が計上された。

 医療機関の再開が約2割にとどまるのは、避難指示が解除されていない地域が多いためだ。ただ解除後に再開するにしても、帰還する住民が少なく採算性が不透明であるほか、医師や看護師の確保も課題となってくる。県は、運営費や人件費のほか看護職員を確保するための経費なども補助しているが、帰還する住民のニーズに合わせた医療提供や中長期的な財源確保などが求められる。

 一方、震災後、双葉郡で唯一の入院機能を有した高野病院の院長が亡くなり、院長(管理者)確保が課題となったが、4月以降、新院長を含めて常勤医2人を確保できる見通しとなった。

 「医療支援望む声」最多 浪江、富岡町民の意向調査

 国、県と浪江、富岡各町が実施した両町の住民意向調査によると、両町とも帰還に向けた条件や希望する支援として「医療」を挙げた人が多かった。

 昨年10月に公表された富岡町の調査では「帰還する場合に希望する行政の支援は」の問いに対し、「医療、介護福祉施設の再開や新設」が78.3%で最多。同11月に公表された浪江町の調査でも「帰還する場合の条件」の問いに、「医療・介護が整うこと」が66.9%で最も多かった。両町とも次いで多かった回答は、商業施設の再開や整備だった。