東電グループマネージャー・川口孝弘氏に聞く 作業環境の改善実感

 
「高線量のリスクを低減するために汚染水をできるだけ早く除去するという思いでやってきた」と話す川口グループマネージャー

 1号機タービン建屋内にためられた汚染水の抜き取りが今月中に完了する。全ての建屋の中で、汚染水の処理が完了するのは初めて。汚染水の排水設備の設置作業を統括する東京電力福島第1原発水処理設備部の川口孝弘移送設備グループマネージャー(46)に作業の進み具合を聞いた。

 ―タービン建屋内の空間放射線量はどのぐらいか。
 「高いところで毎時1ミリシーベルト程度。汚染水がたまっていて、そこから(水を希釈させて汚染濃度を下げながら)水を抜いて除染し、作業エリアとして使えるようにした。(放射線を遮る効果がある)水を抜いた直後は線量が高く、毎時数十ミリシーベルトというような状況だった。環境改善してやっと人が入れるようになった」

 ―直面している課題は。
 「設備設置はどうしても被ばくとの闘いになる。建屋の中は基本的に水がある場所の線量が高いという認識で、少しでも線量を下げられないか知恵を出し合いながらやっている。最後に残った高線量の部分にどうアクセスするか。工夫のしどころだと思っている」

 ―具体的な工夫点は。
 「作業場で短時間の打ち合わせができるように避難小屋を作った。あとは作業場全体を見渡せるようなカメラを設置して、建屋1階の線量が低いところからマイクで指示を出すなど、なるべく被ばくしないよう工夫している」

 ―設備設置の作業体制は。
 「放射線を遮る遮蔽(しゃへい)や除染をした上で作業しているが、一般の作業環境から比べると非常に高線量なので、交代で1日延べ60~70人入っている。そのほか、別な場所で電源を設置する関連作業なども合わせれば1日約130人が携わっている」

 ―1号機タービン建屋地下にたまる汚染水の抜き取りは今月中に完了する計画だ。
 「線量が高いタービン建屋の1階から汚染水を抜いてきた。最終段階は最下層(約10メートル下)の床面に二つのポンプを落とし、水を抜いて床面を露出させる。3月末までに完了するよう計画通り進めている」

 ―建屋の汚染水抜き取りについて、2、3号機の展望は。
 「1号機は雲をつかむ思いで検討しながらやっていたが、いろいろなノウハウを得ることができた。これを踏まえて2、3号機の計画を立てていきたい。各号機の特性に当てはめて実際にどう進めていくか検討したい」

 ―事故から6年が経過しようとする現状は。
 「震災直後は福島第1原発の冷却設備関連業務に携わり、Jヴィレッジから全面マスクを着けて発電所に向かっていた。今は全面マスクの範囲は限られ、一般的な格好で動ける範囲も広がった。作業環境はだいぶ良くなったと感じている。ただ、汚染水がたまった建屋は圧倒的に線量が高い状況にある。周辺環境に影響が出ないよう水漏れには十分注意して取り組んでいる」

 ―長く険しい廃炉作業。家族の理解は。
 「静岡出身で家族は静岡にいる。地震直後は特に心配していたが、状況が日々改善されていることを説明していくにつれて今は安心して送り出してくれる。6年生の長女は一昨年、(新潟県の)柏崎刈羽原発に連れて行った。案内して(福島第1原発の)状況も分かってくれたと思う。応援してもらっている」