【起き上がり小法師】〔南相馬・カヤノキファーム〕トマト栽培活路開く

 
水耕栽培でプチトマト作りに取り組むカヤノキファームの只野代表(右から3人目)ら

 県内有数の種苗生産農家だった南相馬市鹿島区のカヤノキファームの状況は東京電力福島第1原発事故で一変した。代表の只野孝一さん(64)は山形県に一時自主避難し、2012(平成24)年に本格的に営農を再開したが、何十年も付き合いのあった大手量販店から「南相馬の苗は取り扱わない」と告げられ、取引を断れるなど風評被害に苦しんだ。13年度の受注額は震災前の約半分に落ち込み、14年度も約6割にとどまったという。

 「先祖代々続いてきた農業を自分の代で終わらせるわけにはいかない」。只野さんはイスラエル政府から県に贈られた水耕栽培用資材を使ったトマト作りに復興への活路を見いだした。試行錯誤の末、種苗の生産販売のほか、糖度が高く人気のあるプチトマト「プチぷよ」の栽培と、ジャムやジュースなどの6次化商品の開発に力を入れる。

 15年からは同市鹿島区にあるセデッテかしまの直売所で野菜などの販売を始め、「消費者の反応を直接見られるのは励みになる」と笑顔を見せる。直売所の売り上げは右肩上がり。種苗の受注金額も震災前の約8割に復帰した。

 只野さんは「農業関係の支援制度は充実してきている。手続きの簡略化、迅速化が図られるとありがたい」と期待を込め、「安全でおいしいものを作れば必ず売れると確信した。これから南相馬市で農業をやろうとしている若者のモデルケースとなれば」と意気込みを語った。