【起き上がり小法師】〔楢葉・マルミ〕町内唯一の衣料品店

 
楢葉町で唯一の衣料品店を再開させた(右から)西山さん、イネ子さん、真奈美さん

 楢葉町で小、中学校が6年ぶりに再開した前日の4月5日、新店舗での営業を始めた。学校指定の運動着などを扱う町内唯一の衣料品店として、地域の復興を支えるため再出発した。

 店は西山実さん(78)と妻イネ子さん(80)が1959(昭和34)年に開業した。学校の運動着のほか、呉服や婦人服など幅広い商品を取りそろえた。西山さんが精力的に売り歩き、縫製を学んだイネ子さんが仕立てを受け持つという夫婦二人三脚で切り盛りしてきた。

 震災と原発事故の影響で西山さん一家はいわき市に避難し、店は休業に追い込まれた。同市の仮設校舎で学校が再開された際には、町内の衣料品店でつくる組合の立場から新入生に制服を販売することもあったが「楢葉に戻ってまた商売をやるとは夢にも思わなかった」と西山さんは振り返る。

 震災前、町内に6軒あった衣料品店は次々と再建を断念。店を閉める多くの理由は後継者不足とみられ、西山さんも例外ではなかった。しかし、町商工会事務局長に就いた長男正則さん(55)の妻真奈美さん(50)が「楢葉で店を存続させたい」と自身が経営を引き継ぐことを決意。旧店舗を解体し、4世代8人が暮らせる住居を兼ねた店舗を新築した。

 避難指示解除から1年8カ月が過ぎ、顧客の姿も戻り始めた。真奈美さんは「若い人に気軽に入ってもらえる店づくりを目指す。ニーズに応えられるようにしなければ」と力を込める。