『福島の浜辺』再びにぎわいを...薄磯海水浴場・17年夏「再開」

 
「震災前のような海にしたい」と、海の家の開設準備を進める鈴木区長

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から、7回目の夏を迎えた。震災前、本県沿岸部の夏の観光資源だった海水浴だが、今夏はいわき市で3カ所目となる薄磯海水浴場が再開する。甚大な津波被害や放射線量など数々の困難を乗り越え、かつてと同じにぎわいを取り戻せるか。猪苗代湖の湖水浴も含め、水浴場の現状を見る。

 薄磯海水浴場・鈴木区長「今年が新たな始まり」

 県内随一の海水浴客を誇った、いわき市の薄磯海水浴場は今夏、市内3カ所目の海水浴場として開設される。長年、同海水浴場で海の家を営んできた鈴木幸長薄磯区長(64)は15日の海開きに向け、海の家の開設準備に慌ただしい。鈴木区長は「今年が新たな始まり。どれだけお客さんが来るか分からないが、海の家をなくしたら駄目な気がする」と作業に精を出す。
 同海水浴場は震災前の2010(平成22)年、26万人以上が訪れた。しかし震災の津波で甚大な被害を受け、大規模な復旧・復興工事が必要となり、海水浴場の再開は見送られてきた。
 県は、薄磯地区での津波や高潮への対応として、震災前より2メートル以上高い海抜7.2メートルの防潮堤を整備。また海側と市街地側をつなぐ通路として、新たに幅約17.5メートルの広い階段と、手すり付きで段差のないスロープを設置した。
 鈴木区長は「笑顔で海水浴を楽しんでもらいたい。震災前のような海水浴客でいっぱいの海にしたい」と思い描く。

 相馬の原釜尾浜海水浴場、18年夏再開目標に調整

 相馬市の原釜尾浜海水浴場は、市が2018年夏の再開を目標に調整を続けており、県相馬港湾建設事務所などが堤防や防災緑地を整備している。同市の漁師安達利郎さん(66)は「震災から6年が経過しても再開できていないのはもったいない」と再開を待ち望む。
 松川浦周辺の旅館には震災後、復興事業関連の作業員らが滞在していたが、現在は作業員宿舎などに移り、地元では観光客の誘客が期待されている。被災前、原釜地区に住んでいた安達さんは「観光のためにも一日も早く、元の姿に戻ってほしい」と話す。
 市は整備の進捗(しんちょく)を見ながら、再開後の運営態勢を構築するため今秋にも関係団体との協議を始める方針。市は「浜辺の安全性や避難ルートの確認も進めていく」としている。

 『サーフィンの名所』復活に期待

 南相馬市原町区の北泉海岸では昨年7月、震災以降中止されていたサーフィンの大会「南相馬市長杯」が6年ぶりに開催された。同海岸は震災前、サーフィンの国際大会なども開かれ、国内外から多くのサーファーが訪れていたが、市長杯以降は"サーファーの聖地"として復活を果たしつつある。
 同所以外でも、今年はいわき市の四倉海岸で16日に「がんばろう福島in四倉サーフィンコンテスト」が開かれる。各地でサーフィンの名所が震災前の姿を取り戻しつつあり、県サーフィン連盟の室原真二理事長は「自分たちがサーフィンを楽しむことで、福島の海の風評払拭(ふっしょく)や、かつてのにぎわいづくりに貢献できれば」と期待を寄せる。