復活目指す「福島県産農産物」 色濃く残る風評...熱い闘い続く

 
産地のさらなる発展を誓う相任さん

 夏の県産農産物を代表するモモやキュウリ、トマトなどの出荷が最盛期を迎えている。しかし、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から7度目の夏を迎えた中、風評などの影響は依然として色濃く残る。一部産品で震災前の水準に回復したケースもあるが、生産者や農業団体、県、市町村など関係者の熱い闘いは続く。

 【南郷トマト】16年・販売実績「過去最高」

 甘味と酸味のバランスが良く、首都圏でも人気の高い南会津郡特産の南郷トマト。県内の他の農産物が根強い風評の影響を受ける中、販売実績は昨年に過去最高の10億6000万円を達成するなど好調だ。

 「JAと協力して安全性を訴えながら東京の取扱先に何度も足を運ぶと、販売の維持に努めてくれた」。原発事故発生時、南郷トマト生産組合長を務めていた南会津町の農家馬場崇嗣(たかし)さん(65)は当時を振り返る。大手量販店が取引を控える中でも、1962(昭和37)年の生産開始から50年にわたり高い品質のトマトを出荷して築き上げてきた信頼関係もあり、多くの中小スーパーは変わらず取引を続けてくれたという。馬場さんは「風評による極端な売り上げの減少を回避できたのは、味にこだわり抜いて生産し続けてきた成果だ」と胸を張る。

 馬場さんの約72アールのトマト畑を引き継ぐ長男相任(そうじん)さん(35)も「産地のさらなる発展に向け、品質の向上を追い求めていく」と誓った。

 【キュウリ】震災前より単価好調

 須賀川・岩瀬地方の特産品夏秋キュウリは、全国有数の出荷量を誇る。昨年の1キロ当たりの単価は289円で、東日本大震災前より高値を維持した。JA夢みなみすかがわ岩瀬地区支援センターの大賀学さん(33)は「夏秋期のキュウリの物量が減っていること、品質価値を見て購入してくれるようになったから」と分析する。

 同センターによると、同地方の2011(平成23)年の販売数量は約866万キロ、単価は1キロ264円で震災前とほぼ変わらなかったが、12年は風評被害もあり、販売数量は約908万キロ、単価は1キロ185円と大きく落ち込んだ。現在は回復基調にあり、大賀さんは「JAと市町村が協力したPR、県全体の風評払拭(ふっしょく)に向けた活動が生きている」としている。

 【モモ】東京五輪効果に期待

 モモは主力品種「あかつき」の出荷が最盛期を迎え、県北地方を中心に各地の共選場がフル稼働し、本県自慢の果実を全国に送り出している。一方、生産者らはモモの現状について「風評は根強い」と険しい表情を浮かべる。

 JAふくしま未来伊達地区本部によると、原発事故以前、同地区では旧JA伊達みらい時代の販売額が多くの年で30億円以上を記録していたが、事故後は一度も30億円に達していないという。

 国見町のモモ農家村上一さん(69)は「風評がまだあるということが、価格に表れている」とため息をつく。高齢化でやめてしまう農家も多く、担い手不足も深刻だという。

 そんな村上さんが期待しているのは3年後の東京五輪の効果だ。「夏に開かれるので需要があると思う。今はそれまでの準備期間だと考えたい」と話す。