真価問われる「凍土遮水壁」 汚染水減へ『切り札』全面運用

 

 政府と東京電力が汚染水の発生量を減らす「切り札」と位置付けるのが、福島第1原発1~4号機建屋周囲の地盤を凍らせる「凍土遮水壁」。8月22日から未凍結部分の凍結が始まり、昨年3月末の凍結開始以降、1年5カ月を経て全面運用にこぎ着けた。

 建屋周囲の地中に全長約1.5キロの氷の壁を築く凍土壁は、放射性物質で汚染された建屋への地下水流入を防ぎ、新たな汚染水の発生を抑える狙いがある。1500本余りの凍結管を地中30メートルまで埋め込み、マイナス30度の冷却剤を循環させて氷の壁を築く。未凍結部分が完全に凍るのは2~3カ月後の見込みだ。

 地下水の流入量は、凍土壁のほか建屋近くの井戸「サブドレン」からのくみ上げ、地下水を高台の井戸でくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」の導入で、当初の1日当たり約400トンから約140トン(7月平均)まで減った。東電は今後、100トン以下まで減らす目標を掲げている。

 凍土壁には約350億円の国費が投じられ、電気代などの維持費に年間十数億円かかるとされる。政府と東電には費用対効果をどう見通すかも求められている。