【起き上がり小法師】〔いわき・食処くさの根〕「地域の台所」目指す

 
「地域に根差した店を目指したい」と話す新谷さん

 店頭に並ぶ県産野菜や小名浜港で水揚げされた海産物。地産地消にこだわった、いわき市四倉町の直売所・食堂「食処くさの根」は、できるだけ地元で採れた食材を取り扱っている。経営する新谷尚美さん(65)は「地域の台所になるようなお店にしていきたい」と話す。

 同市四倉町の「ふれあい物産館」で1999(平成11)年から直売所を運営してきた。同館が現在の「道の駅よつくら港」となった約1年半後、東日本大震災が発生、津波がいわき市の沿岸部を襲った。道の駅も甚大な被害を受け、新谷さんは一時、兵庫県の実家に避難した。

 新谷さんはその間も被災した四倉地区の状況が頭から離れず、1カ月もたたないうちにいわきに戻った。海沿いにがれきが残る中、軽トラックや専用車両を使用し、食材の移動販売を始めた。

 新谷さんは「とにかく物が不足していたが、少しでも地域で役立ちたかった」と当時を振り返る。

 その後も移動販売を続けたが、被災した地域のスーパーなどは再開のめどが立たず、新谷さんは直売所の再開を決意。2011年10月、コンビニエンスストアが入っていた建物を借り、1階が直売所、2階が食堂の店舗を構えた。店は順調で、現在は従業員もスタート時の8人から20人を超えるまでに増えた。

 食堂では地元で水揚げされた魚や地元産の野菜を使用した料理を提供し、地域住民らの憩いの場にもなっている。「今の子どもたちが大人になっても来られるような店にしていきたい」と新谷さん。草の根のように地域に根付くことを願っている。
 営業時間は午前7時~午後10時。月曜定休。