「再生エネ」実用化着実 産総研福島研究所、支援策で企業後押し

 

 再生可能エネルギーの大量導入に向け、新技術の開発を進めている産業技術総合研究所(産総研)の福島再生可能エネルギー研究所(郡山市)は今月、開所から3年6カ月を迎えた。地元企業と連携し、再生エネ技術の実用化に成功するなど、その取り組みは着実に芽が出始めている。

 同研究所は2014(平成26)年4月、産総研の国内10カ所目の拠点として総事業費約101億円をかけて開所した。研究本館、実験別棟に加え、太陽光や風力など約800キロワットの発電能力がある実証フィールドなどを完備。国内唯一の再生エネに特化した研究機関として、企業や大学の教育機関などから年間約4500~5000人が視察に訪れている。

 同研究所では、太陽光、風力エネルギー、水素キャリア、地熱、地中熱、エネルギーネットワークの六つの研究チームに分かれ、これまで基礎研究から実証実験までを行っている。今月には水素エネルギー社会を目指した研究を進める「水素・熱システムチーム」を新設。今後、より専門性を高め、幅広い研究を展開していく考えだ。

 また、再生エネ分野で事業化を目指す被災地の企業を支援する「シーズ支援プログラム」は、施設が完成する前の13年度から始まり、5年目に突入した。本県と宮城、岩手両県の立地企業が対象で、企業側が、財政面などから独自に整備するのが困難な実験機器の支援や技術的なアドバイスを受けられることが、このプログラムの大きなメリットになっている。

 これまで延べ44社107件(県内は32社81件)の事業を採択し、研究や技術開発を支援。このうち9件が実用化されている。本年度は24社25件の事業が採択され、被災地での新たな産業創出につなげようと、研究が進められている。

「再エネ」実用化着実 産総研福島研究所、支援策で企業後押し

 研究機関、県内に続々

 震災後、県内では浜通りを新産業の拠点とする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の実現や再生可能エネルギー、医療、ロボット関連企業の集積に向け、各分野の研究機関などが相次いで整備されている。

 新設されたのは、廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟(富岡町)や大熊分析・研究センター(大熊町)、楢葉遠隔技術開発センター(楢葉町)など廃炉研究施設に加え、災害対応ロボットの実証拠点となるロボットテストフィールド(南相馬市、浪江町)、国際産学官共同利用施設(南相馬市)、放射線や新エネルギーに関する取り組みを紹介する環境創造センター(三春町)、医療機器の開発から事業化までを一体的に支援するふくしま医療機器開発支援センター(郡山市)、県民の健康を守るための診療から研究まで幅広い機能を備えた福島医大のふくしま国際医療科学センター(福島市)など。