青ノリ出荷再開「本当にうれしい」 相馬・松川浦、喜びかみしめ

 
「未来への道筋を作りたい」とノリの摘み取りを行う大森さん=2月5日、相馬市松川浦

 相馬市松川浦では2月、7年ぶりに名産の青ノリの出荷が再開された。「再開まで長かった。本当にうれしい」。ノリ漁に携わる同市の大森東さん(70)は喜びをかみしめながら作業を行っている。

 「最初はすぐに再開できると思っていた」。だが、大森さんの予想は外れた。乾燥させたノリの放射性物質の低減のほか、津波で種場が流されたり、一部海底の地形が変わったことで漁業者の予想以上の時間を要した。漁業者らは震災前のノリ棚の風景を取り戻そうと、がれきの撤去や種場の再生、天然種の増殖などに努めてきた。大森さんは「準備作業ばかりだった。出荷作業も昔を思い出しながらやっている」と振り返る。

 松川浦では4月末まで週2回を目標にノリの摘み取り作業が行われ、県内のスーパーなどに並ぶ。2月20日には乾燥させたノリの出荷も始まった。相馬双葉漁協や県によると生ノリ、乾燥ノリともに予定量以上を出荷できており、順調なスタートを切れたという。

 ただ、本格再開には課題も残る。海底が削られたことでノリ棚を設置できない場所があり、震災前と同様の量を作るには砂入れなどの処置が必要。大森さんの周囲ではノリ漁を継ぐ予定だった多くの若者がこの7年で離れてしまったといい、「不安も残る」と複雑な表情を浮かべる。

 「すぐに昔のようには戻らないかもしれない」と大森さん。「自分にできるのは道筋を作ること。次につなぐため養殖を続けていきたい」。活気ある松川浦の光景を取り戻すため、大森さんは決意する。