「農林水産業」回復へ希望の歩み 福島県沖の試験操業水揚げ増加

 

 農林水産業が東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で受けた深刻なダメージは、関係者の努力によって徐々に回復している。農業産出額は震災前の水準に近づいており、漁業は試験操業の対象魚種が増えてきた。一方で農業は担い手不足、漁業は震災前の水揚げ量にはほど遠いという現実もある。本県の主力産業を次代につなぐ取り組みは続く。

 震災と原発事故後、2012(平成24)年から本県沖で取り組まれている試験操業。県によると、17年の水揚げ量は約3285トン(速報値)。発生前の10年の約2万5914トンと比較すると、13%弱にとどまるが、対象魚種や操業海域が拡大されるなど本格操業へ向けた歩みが進められている。

 16年は約2099トン、15年は約1512トンで、地道に増加している。相馬双葉漁協では本年度、新たに青ノリの試験操業が始まったほか、福島第1原発から半径20キロの操業自粛海域が10キロに縮小された。いわき市漁協でも、沼之内魚市場で入札による販売が開始された。そのほか、漁業者の一部が操業日数を増やし、試験操業に取り組むなど、震災前のもとの形に戻そうと、努力が続けられている。

 各漁協と県漁連は、試験操業検討委や復興協議会などで、本格操業に向けた議論を重ね、漁獲可能な魚種の追加や操業する漁法などを話し合ってきた。本年度は、復興協議会が中止になる月が出るなど、県漁連担当者は「新たに決めるべきことは減ってきている」と話す。漁獲量や操業頻度については「いかに事故前の水準に近づけるかというステージにきている」と、現状を説明した。