【現地ルポ】胸に刻む...「苦渋の決断」 失われていく田園風景

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昨年12月に汚染土壌の埋め立てが始まった双葉1工区の土壌貯蔵施設=2月16日、双葉町

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た汚染土壌などを最長30年間管理する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)の建設予定地では、東日本大震災と原発事故から7年を迎えるのを前に、本体となる土壌貯蔵施設が稼働し、施設の拡張工事が急ピッチで進められている。県内各地から汚染土壌の搬入が加速する代わりに、失われていく両町の田園風景。時間の経過とともに風化が懸念される中、報道公開で現地に入り、両町の苦渋の決断の上に本県の環境回復があることを、あらためて胸に刻んだ。

 「契約した地権者の皆さまから、大切な土地を預かっている気持ちで工事に当たっている」。昨年10月に汚染土壌の埋め立てが始まった大熊側の土壌貯蔵施設で、清水・竹中土木・東洋特定建設工事共同企業体(JV)の原田知博大熊町中間貯蔵施設作業所長は語る。

 この土壌貯蔵施設の近くに立つ2階建ての民家の縁側には、子どもの健やかな成長を願ったであろう五月人形が置かれていた。周囲に生い茂っていた草木がきれいに刈り取られた庭先には、机や椅子などが積まれ、静かに解体されるのを待っていた。

 昨年12月に稼働した双葉側の土壌貯蔵施設では、新たに取得された用地を利用し、施設を拡張する工事が行われていた。拡張中の用地には、農地の面影があり、若いサクラの木が残ってた。双葉側の整備事業者によると伐採されるとのことだった。

 予定地周辺『土色の世界』

 中間貯蔵施設は、国道6号から東側、福島第1原発を囲む約1600ヘクタールの予定地に整備される。環境省は、今年2月末時点で予定面積の52.8%に当たる約844ヘクタールの用地を取得。用地が一定程度まとまった場所から、順次、「受け入れ・分別施設」などを整備している。県内の仮置き場から運び込まれた汚染土壌などを土壌と草木などに分ける。

 土壌貯蔵施設の整備現場では、ブルドーザーやショベルカー、ダンプカーなどが大量の土をせわしなく運搬し、整地などが行われている。民家や田畑が広がっていた土地は、一面、土色の世界となっていた。

 建設予定地を貸し切りバスで移動していると、荒れ果てた民家や田畑、雑木林などの合間に、大小さまざまな保管場が設けられている。汚染土壌が入った黒い大型土のう袋や用地造成で伐採されたスギの丸太が大量に積み重なっていた。

 福島第1原発の地上タンク群に程近い大熊町の高台からは、共同墓地を望むことができた。共同墓地はどうなるのか、環境省の担当者は「まだ協議中」と説明した。

 最大2200万立方メートルと推計される汚染土壌のうち、同省は2019年度までに累計650万立方メートルを中間貯蔵施設に輸送し、20年には住宅地などに近い場所から仮置き場を解消することを目指している。用地取得や施設整備が順調に進めば、全ての汚染土壌の輸送は21年度にも完了する見込みという。

 小沢晴司同省福島環境再生本部長は「用地交渉を通して、家や土地への思いを地権者から教わった。原発事故がなければ、明日への希望があった土地だったと思う。その土地の記憶に常に思いを巡らせ、中間貯蔵施設の事業を進めたい」と語る。

 一方、2200万立方メートルとされる汚染土壌の推計には、除染とインフラ整備を一体的に進め、帰還困難区域を再生する特定復興再生拠点(復興拠点)の整備で出る汚染土壌は含まれておらず、不確定な部分もある。