【安倍晋三首相】総力挙げ風評対策 トリチウムは慎重に結論

 
安倍晋三首相

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から7年を迎えるに当たり、福島民友新聞社は9日、安倍晋三首相に今後の本県復興策について聞いた。(聞き手・編集局長 菊池克彦)

 安倍首相は、市場実態調査の結果を踏まえた風評被害対策を今月中にまとめ、速やかに展開する考えを示した。東京電力福島第1原発で保管しているトリチウム(三重水素)を含む水の処分については「専門家や地元の意見を聞き、慎重に方針を決める」と述べた。

 ―震災から7年。本県の現状認識を。
 「福島の本格的な復興に向けて確固たる道筋を付ける重要な局面を迎えている。帰還困難区域の復興拠点整備や、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進など国が前面に立って取り組む。復興庁の後継組織の在り方については、原子力災害からの復興状況などを踏まえて検討する必要がある」

 ―本県復興の障壁の一つは風評被害だ。トリチウム水の扱い次第では新たな被害も招きかねない。
 「風評に関して本年度初めて実施した実態調査の結果を月内に公表する。その結果も踏まえ、小売り、流通事業者への情報提供など実態に即した風評被害対策を、政府の総力を挙げて実行に移す。トリチウム水の扱いは安全性はもとより、風評被害を防ぐ社会的な観点も含め、専門家や地元の意見を丁寧に伺いながら慎重に方針を決めたい」

 ―東京電力福島第2原発の廃炉が進まない。
 「国は第2原発を他の原発と同列に扱うことは難しいと認識している。原発の安全確保は長期にわたる。炉の設置者である事業者が地元に向き合い、最後まで責任を持つべきだ。東電は県や立地市町村を含めた地元の厳しい声に真摯(しんし)に向き合い、その上でしっかり判断すべきだ」

 ―被災地は人口減少に直面している。復興支援を通じて定期的に被災地とつながる人の「関係人口」を増やす取り組みが進んでいるが、どう支援していく。
 「被災地に関心を持った人々が継続的に関わることは、復興に向けた大切な財産となる。来年度から、地域の外の人々が被災地と継続的なつながりを持つ機会を提供する地方公共団体を支援する考えだ」

 ―個人の生活再建などの進展にギャップが生じている。どう差を埋める。
 「それぞれの事情で大きな差が出ているのは事実だ。整備してきた復興道路などのインフラを活用し、被災地の経済が持続的に発展できる取り組みを支援する。心身のケアや生活再建など被災された方一人一人の実情を踏まえたサポートも重要だ」