則藤孝志福島大准教授「日本酒の姿が参考に」 新たな魅力を発信

 
則藤孝志福島大准教授

 国産の原料を使って国内で醸造する日本ワインは近年、国際コンクールで賞を受けるほどまで品質が向上した。果実酒製造場の数は2000年ごろは300ぐらいだったが、400まで増えた。ここまで盛んになったのはワイン醸造が地域の多様な産業と結び付き地域を活性化する可能性を秘めているからだ。ワイナリーに観光客を呼び込んだり、ワインに合うとして郷土食を売り出すなど、地域の魅力を新たな形で発信できる。

 福島はワイン醸造との関わりは深くなかったが、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、新たに地域振興の手段として見いだされた。「何か新しいことをしなければ」との思いがあったのだろう。

 生食ブドウが「棚栽培」であるのに対し、醸造用ブドウは基本的に「垣根栽培」。日本の雨の多さは栽培上不利かもしれないが、大事なのはいかにその土地に合った品種や栽培技術を確立するかにある。欧州の主産地は自然条件に恵まれていたから主産地になったわけではなく、人が長年改良を加え作り上げたものだ。

 酒には人を集め、楽しませる力がある。だから震災後、県内関係者のワイン熱が一気に高まった。そうした勢いは大事だが、一過性に終わらせないためのビジョンや仕組みも必要。県内各地のワイン造りが緩やかに連携し、多様性を保ちながら栽培、醸造技術の獲得に向けて協力するような在り方が望ましい。県清酒アカデミー職業能力開発校で技術を磨くなどしている福島の日本酒の姿が参考になる。