ワイン造り...環境『熟成』 果実酒「製造免許」取得の動き相次ぐ

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川内村の山あいに広がるブドウ畑。約3ヘクタールに約1万本のブドウが植えられている

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故以降、県産ブドウを使ったワイン造りが県内で広がりを見せている。果実酒の製造免許取得の動きが相次ぎ、背景には、本県に根付く日本酒に代表される醸造技術や、農産物の栽培技術などがある。人を呼び込むワイナリー(醸造所)が観光振興にもつながるとあって、動きは拡大していきそうだ。

 川内再生へ新たな形

 【川内・かわうちワイン】阿武隈山系に抱かれた標高約700メートルの山あいにブドウの木が整然と並ぶ。川内村上川内にあるブドウ畑「高田島ヴィンヤード」。原発事故からの村の産業再生へ、地元の期待を背負うワインの生産に向けた準備が進む。
 2016(平成28)年6月に全ての避難指示が解除された村は、住民の帰還促進につながる産業再生の在り方を探る中、全国的に消費量が拡大しているワインに着目。日照時間が長く、水はけの良い土地が多いことなどワイン用のブドウ栽培に適した条件も重なり、産地化を進めてきた。
 「人工物がなく、これほど素晴らしいブドウ畑を見渡せる風景は川内にしかない。新たな観光地となる」。村などが出資して昨年8月に設立した新会社「かわうちワイン」の高木亨社長(59)は川内産ワインの可能性に期待を込める。約3ヘクタールのブドウ畑で栽培している品種は赤ワインとなる「メルロー」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」、白ワイン用の「シャルドネ」の3種で、これまでに植えた苗木は計約1万本。今秋にもワイナリーの建設に着手し、2020年東京五輪・パラリンピックに合わせた出荷を目指している。
 高木社長は「川内村らしい、まったりとした優しい味わいのワインを目指す」と意気込む。将来的にはブドウ畑を一望できる丘の上に宿泊施設やレストランを建設したい考えで、ワインを核にした村の活性化へ夢を膨らませる。

 四季島にも提供

 【二本松・ふくしま農家の夢ワイン】震災後、農業復興を目指す地元農家らが設立。地元産のブドウやリンゴを使った果実酒「シードル」とオリジナルワインを売り出している。
 2013(平成25)年3月に製造免許を取得し、同年7月にリンゴのシードルを製品化して販売を開始。震災のあった11年から遊休農地や耕作放棄地約6ヘクタールに植えているブドウは約1万2000本になり、7種類のワインは市内の道の駅や福島市のコラッセふくしまに出荷。出荷量はワインだけでも720ミリリットル入り換算で年間6000本以上に上る。武藤栄利専務(64)は「各地にファンがいて、遠くから足を運んでくれる」と説明する。
 主な品種は「ヤマブドウ」と「カベルネ・ソーヴィニヨン」を交配させた「ヤマ・ソーヴィニヨン」。赤ワインは香り高く優しい口当たりが特長。JR東日本の高級寝台列車「トランスイート四季島」でも提供している。

 会社設立も視野

 【会津美里・会津ワイナリー会】「ワイナリーを核にした地域活性化と観光誘客を図り、復興に貢献したい」。ワインの製造・販売による6次産業化を進める横山義隆理事長(66)=神奈川県在住=は思いを語った。
 会津を応援する首都圏在住者らが2016(平成28)年に設立。「新鶴ワイン」で知られる会津美里町新鶴地域で白ワイン用の品種「シャルドネ」を栽培しており、20年以降のワイナリー建設を目指している。
 現在は地元のブドウ農家から土地を借り受け、約70アールの畑で苗木約250本を栽培。昨秋に初めてブドウを収穫し、今年に入り埼玉県でワイナリーを経営する知人に頼み、試作用ワインを完成させた。会津美里町出身の大越康弘会長(76)=東京都在住=は「糖度が20度を超える良いブドウができたが、ワインの質を一層高める必要がある」と話す。さらに、会社設立も視野に入れる。

 年間25種類を製造

 【いわき・みどりの杜福祉会】知識も技術もない文字通りゼロから個性豊かなワインを造り上げた。
 障害者が主体となってワイン造りを手掛けるココ・ファーム・ワイナリー(栃木県)を見習い、2009(平成21)年に広野町に試験農場を設け、ワイン用ブドウの栽培を開始した。原発事故で中断を余儀なくされたが、13年ごろにいわき市に新たな農園を設けて栽培を再開させた。ワイナリーの開所とともに製造免許を取得。県外で醸造を学んだスタッフと障害者計約30人が栽培、収穫、醸造などの作業に携わる。
 市内3カ所の農場計約3ヘクタールで「マスカットベリーA」や「シャルドネ」など10種のブドウを栽培し、年間で25種類1万5000本以上のワインを製造する。ワインは市内の酒販店などに並び、通信販売も行っている。スタッフの今野麻未さん(29)は「品評会にも出品してみたい」と話した。