被災地防災『試行錯誤』 消防団員不足が深刻化、火災防止へ巡回

 
防火水槽の水の残量を調べる(右から)吉田さん、牧野さん、高橋さん=双葉地域防災パトロール隊

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が出た双葉郡の町村で、地域に密着して防火活動などに当たる消防団員の不足が深刻化している。消防職員のOBがパトロール隊を結成したり、町職員が消防団員になったりと、帰還する住民の安全確保に向けて試行錯誤が続く。

 「帰還困難区域では落ち葉や枯れ草が堆積し、大きな火災につながる危険箇所が目立つ」。双葉地域防災パトロール隊の吉田守さん(65)ら隊員は日々、双葉郡内を巡回し、火災の未然防止に目を光らせている。

 郡内では東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域が残る。避難指示が解除された自治体でも消防団員の帰還が進まず、地域防災力の低下が課題だ。このため双葉地方消防本部は11月5日から、専属の隊員を配置してパトロールの強化に乗り出している。

 隊員は、元相馬消防署副署長の吉田さん、いわき市消防団に約15年所属した牧野重男さん(68)、除染関係の仕事に携わったことで郡内の地理に詳しい高橋健一さん(67)の3人。平日の午前8時30分~午後5時15分に、消火器や自動体外式除細動器(AED)を積み込んだパトロールカーで郡内を巡回し、万一の事態に備えて防火水槽の水の残量や傷病者がいないかどうかも見て回る。

 活動開始から1カ月が過ぎ、成果も見え始めた。浪江町の自宅敷地でたき火をしている住民を発見した際には注意を促すとともに、管内の消防署に火を消してもらうように協力を求めた。

 昨年4月には帰還困難区域となっている浪江町の十万山で鎮火まで12日間を要する大規模な山林火災が発生した。吉田さんは「乾燥期に入り、たばこのポイ捨てなどでも簡単に火が付いてしまう。注意深くパトロールを続ける」と力を込める。