今井さん「ほっとできる夜の憩いの場に」 南相馬の居酒屋・更紗

 
「住民がほっとできる夜の憩いの場にしたい」と話す今井さん=南相馬市・居酒屋「更紗」

 「住民がほっとできる夜の憩いの場にしたい」。南相馬市小高区で2017年5月、6年2カ月ぶりに営業を再開した居酒屋「更紗(さらさ)」。原発事故による避難、同市原町区に移転した店舗の焼失といった困難を乗り越え、店主の今井一江さん(48)は力を込める。

 地元の小高商工会によると、昨年11月20日現在、同市小高区で営業を再開した飲食店は更紗を含め6店舗。震災前の4分の1にとどまる。今井さんは01年、更紗をスナックとして開店。原発事故による避難指示に伴い11年8月に同市原町区に店を移し、小料理屋にした。しかし、営業が軌道に乗った16年3月に起きた火災で焼失。再開を目指して物件を探したものの見つからず、同市小高区の元の場所での営業を決めたという。

 昨年12月からランチ営業を始めたことで顔なじみに加え、店を訪れたことのなかった親子連れの姿も見られるようになった。ただ帰還した人が少なく、週末に客が1人も来ない日があるなど客足は読めない。今井さんは旧避難区域での営業の難しさを感じている。JR小高駅発の最終列車が午後9時前後と早く、時間を気にしながらお酒を飲む人がいるのも悩みの一つだ。

 今井さんは次男と、同級生の3人で店を切り盛りしており、看板メニューは牛すじのトマト煮ともつの煮込みだ。「ぜひ店に来てほしい」と今井さんは笑みを浮かべた。