【いわき】進む仮設住宅『再利用』 県外被災地に28棟56戸移築

 

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から8年が経過しようとする中、被災者の住まいの確保のために建てられ、その役目を終えつつある仮設住宅を再利用する動きが出ている。宿泊施設や移住定住促進住宅に生まれ変わったほか、県外に運ばれ、西日本豪雨や大阪北部地震の被災地で家を失った人々の生活を支えている。仮設住宅の中にはまだ使える物も多く、「もったいない」との思いもあるようだ。

 西日本豪雨で被害を受けた岡山県総社市は昨年8月、住民が退去した、いわき市の「高久第10応急仮設住宅」にある木造の28棟56戸を本県から譲り受け、総社市の2カ所で管理棟として2棟、住居として24棟48戸を再利用している。

 解体や輸送などに時間がかかったものの、新築よりも工期を短縮できるなどメリットがあり、総社市の担当者は「作業はスムーズに進んだ」と説明する。プライバシーを確保でき、木の温かみを感じられる住環境は「入居する被災者に好評を得ている」と強調する。大阪府豊中市の日本民家集落博物館は、事務棟として利用していた「河内布施の長屋門」が昨年6月の大阪北部地震で被災したことから代替として高久第10応急仮設住宅の1棟を譲り受けた。3月の完成を目指し移築を進めている。

 博物館を運営する大阪府文化財センターによると、高久第10の仮設住宅には日本古来の板倉工法【注】が採用されており、担当者は「震災の記憶を残すための社会的な意義に加え、博物館敷地内の建物との景観にも違和感なくなじむと考え申し出た」と話す。博物館は仮設住宅の運送や移築の費用を賄うため、寄付を募っている。

 【注】日本古来の神社や倉庫で使用されてきた木造建築技術。国産のスギを使用した厚板で屋根、壁、床を構成する。長持ちする上、室内に湿気がこもりにくいとされる。