【現地ルポ】変わる古里...国に重責 県外最終処分、確実な遂行を

 
県内各地の汚染土壌が搬入されている中間貯蔵施設。奥の福島第1原発を囲むように整備が進んでいる

 東京電力福島第1原発事故に伴い、県内の除染で出た汚染土壌などを最大30年間保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)には、県内各地の仮置き場からの土壌が次々と運び込まれている。用地交渉の進展に伴い、施設の拡充も急ピッチで進む。汚染土壌の搬入が加速する一方、失われていく美しい田園風景。東日本大震災と原発事故から8年を迎えるのを前に現地に入った。

 報道陣に公開されたのは、大熊町側の受け入れ・分別施設と土壌貯蔵施設。受け入れ・分別施設では、大型土のう袋がダンプカーの荷台に積まれて次々と運び込まれ、土壌に混じった草木や石などを分別する作業が行われていた。草木や石などを取り除いた土壌は土壌貯蔵施設に運ばれ、1日当たり700~1000トンが埋め立てられているという。土壌が埋められ、整備が進む一方で、古里の風景が失われていく現状を垣間見た。

 中間貯蔵施設が整備されるのは、元々は田畑や住宅などがあった地域だ。今後、解体される民家もある。ある民家の窓際には、子どもたちが遊んでいたはずのぬいぐるみが並んでいた。和気あいあいと触れ合う子どもたちの日常生活があったのだろう。いずれ取り壊されると想像すると同時に、長く、険しい復興への道を改めて思い知らされた。

 政府は法律で「使用開始後30年以内の県外最終処分完了」を定めており、45年3月12日までに同施設から全ての廃棄物を搬出し、県外で最終処分する計画だ。だが、どこで処分するかは決まっておらず「このまま最終処分場にされるのではないか」という県民の懸念は消えない。国には県民との約束を確実に成し遂げることが求められる。